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2008年03月26日(水) 質的研究者、質的研究者を語る

大倉得史さんから「語り合う質的心理学ー体験に寄り添う知を求めて」(ナカニシヤ出版)をご恵送いただきました。

6章あたりを中心に「松嶋が〜」「松嶋が〜」いっぱいでていてちょっとビビりますね、自分がこうやってとりあげられるのに慣れてないもので。

エスノメソドロジー的な記述について、大倉さんの「語り合い法」との対比からいろいろ批判的に論じられていて、僕の本はそこにとりあげられています。これは2年前だったか、名古屋での「てんむすフィールド研究会」での議論をもとに大倉さんが書き、僕とのメールでのやりとりを通して若干修正してくださったりしてできたものと理解しています。

トランスクリプトをめぐる見解や、他人の心がわかるというのはどういうことなのかということなど、誤解されているように思えるところもあるけれど、大倉さんの問題意識はわかるし、僕の会話分析的手法がすべてをカバーできるとも思っていないのでよしとする。

とはいえ、これは手法間の本質的な差異というよりも、やはり大倉さんが求めたい記述の水準と、僕が2005年時点で書いてきた記述の水準とのズレのようなもののようにも思えます(もちろん差異を強調することもできるだろうが)。つまり、本来、質的研究の数が増えてくれば、お互いの研究に関してのつっこんだ議論ができるようになるべきであり、今回の大倉さんの本は、そうした性質のはじめての本ではないかと思います。

質的心理学って、まだまだ、お互い無干渉な感じですもんね。切磋琢磨が必要だと思います。大倉さんの「現場との緊張感をもった記述」といった理想、あるいは「どんな記述でも許されるのだろうか」といった懸念も、方法論レベルでけりがつくことというよりも、どんどん世の中に作品をおくりだし、そのなかで鍛えられていくことが求められるんじゃないかなと思っています。

まあ、僕としては、こんな若輩者をとりあげて批判対象としてもらえること自体がありがたいことですよ。それだけ注目してもらっているということでもあるからね(それにもしかしたら、大倉さんの本を読んで僕のも買ってくれるかもしれないしw)。

本書と、そこにとりあげられているいくつかの著書(僕のも含まれる)をあわせて読んでいただき、読者の質的研究の評価についての議論が豊かになればよいと思っています。


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