2005年04月10日(日) |
「A2Z」/山田詠美 |
ひさしぶりに山田詠美が読みたくなった。 と同時に、結婚しているのに旦那さん以外に恋をする―というテーマにもひかれたのかもしれない。 自分自身、旦那さんのことは大好きで猛烈に恋をしていて結婚して幸せなのだけど、でもいつのまにかその気持ちが信頼や、なんて言うんだろう、友情とも違う、もっと責任やあきらめも伴う「パートナー」に近い気がして、あんなに7年以上も恋をしていたのに、もう恋を通り過ぎたのだなぁ、と実感することが最近多くなったのも事実だから。
本の中で、夏美は成生(10歳下)と恋をする。そして夏美の夫、一浩も冬子に恋をする。 山田詠美らしく、それぞれの恋も夏美と一浩の関係も丁寧に綴られていくけど、私が注目したのはこの夫婦のあり方(関係)。 2人共、帰るべき家〜それは文字通り2人のマンションなんだけど〜があるから、恋が出来る。 そして、恋は終わりがやってくる。
そうなのだ、初めは一緒にいるだけで幸せで2人だけの小さな決まりごとや習慣や出来事が増えていくと同時に恋もどんどん熟していくのに、ある瞬間からなぜか、恋は熟れ過ぎていく。相手の一言や行動が気になり、一緒にいるときの幸福感がどこかへ消えていってしまうのだ。そして恋は終わる。
一浩も夏美もあっという間に恋に落ちていき、そして丁寧に恋を紡いでいくけど、それはいつか終わっていつかまた家に帰り、二人でその恋の終わりについて語り合う時間が来ることを、体のどこかで知っていたのではなかったのか―・・・私にはそんな風に思えました。
いずれにせよ、ひさしぶりに山田詠美の丁寧に恋を綴る文章がとても心地良くて、とても後味がいい本でした。 文庫版の、江國香織の解説もぜひどうぞ。
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