徒然ハトニッキ
(映画編)

はとの不定期映画鑑賞日記。

2006年08月27日(日) ユナイテッド93

監督・製作・脚本 ポール・グリーングラス

映画を観てこんなにも動悸が激しくなったり、顔が熱くなったり、体中の血が沸騰するような感覚に襲われたのは初めて。
何度も画面の乗客達のように大声で叫んでしまいそうになった。

不謹慎なのを承知で言うと、この作品はとても面白い。
おそらくこの作品を観る観客の全員はこの作品の結末をもう既に知っている。
ユナイテッド93の乗客達の最期を知りつつ椅子に座って何も出来ずただただ手に汗握って見つめるしかない。
例えばただのフィクションであればストーリーの伏線を表すためのクローズアップでさえ、この作品においてはもう戻ることのできない運命の瞬間としてどうしようもなく胸を締め付ける。
 
ノンフィクションを作品化することは稀ではない。
その多くの場合、作品の娯楽性を高めるために多くのフィクションを混ぜ込んだり、またはドラマ性を一切排除しあくまで記録であろうとするドキュメンタリー作品だったりする。
しかし、このユナイテッド93は事件に対しての冷静な視点を持ったまま計算されつくした編集、脚本、カメラワーク、音で観る者を引きずり込む。
管制官・軍関係者は実際に本人が出演していたり、乗客役はほとんど即興での演技であったりするのもより事実に近い臨場感を出すための演出として成功している。

こんなに特異な条件の揃った作品は滅多に観られるものではない。
9.11.に起こった出来事は非常に不幸でショッキングな歴史に残る事件だ。
製作者にとってはこの作品を作る上で様々な思いやメッセージを託していることと思う。勿論、真実の事件である限り観る側にとっても色々なことを考えさせられることは必至ではあるが、こんなにも体中が熱くなる作品を観ることが出来たという奇妙な幸福感にも満たされる。

観念的で抽象的な悪や正義を描いたファンタジーなアニメーションも面白いだろうとは思うが、この世界の「現実」をこんなにも冷静に且つエンターテイメントとして描いたドラマを観ないのは勿体ないことだ。
重苦しいだけじゃない、この映画は観るものに新しい体験をさせてくれる。

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と、懸命にらしくない感じで下手な文章を綴ってみましたが
要するに面白いから絶対観た方がいいよ!ってことです。
とにかく凄いです。







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