2006年01月16日(月) |
ユーリ・ノルシュテイン作品集 |
目さんからお借りしていたDVD ユーリ・ノルシュテイン作品集を観ました。 それはそれは美しい世界でした。
「25日・最初の日」 人生で最も輝かしいのは生まれて最初の25日。 ソ連の共産主義の始まりを描いた作品。 ノルシュテインの生まれた1941年はドイツとの開戦年だそうだ。 暗くてて硬いモノクローム画面に交錯する燃えるような兵隊の赤が印象的。 この時代がロシアの人々にもたらしたものはとてつもなく大きなものだろう。 私たち多くの日本人は世界史でほんの少し触れるだけ。 ロシアの映画や文学作品を観る度にもっとこの国のことを知りたいなぁと思う。
「ケルジェネツの戦い」 ロシアの史実に基づいた作品だそうだ。 ロシア正教のイコン画がアニメーションとなって動く。 こんなに美しい戦争映画は初めて観た。 ロシアの宗教画はヨーロッパのそれとは違って華やかさ柔らかさは無いが、荘厳で鈍い金の輝きは厳粛さを放っている。 こういったロシア特有の美意識はノルシュテインの他の作品でも大きな影響を感じる。
「狐と兎」 いかにもロシア民芸装飾に溢れた可愛らしいアニメーション。 動物達の造形、描写も見事だが、画面構成の創意工夫が素晴らしい! 物語的には強いとされる動物たちがさっぱり狐に敵わないのが何故なのかが気になる。 そして狐がメスなのも気になる。 バラライカを弾く兎がとても可愛い。
「あおさぎと鶴」 ユーモラスなあおさぎと鶴の動きと表情がまるで人間のように情感豊かに描かれている。 いわゆる”ツンデレ”ってやつだよね!? アホで面白い。
「霧につつまれたハリネズミ」 これは機会があったら是非大きな画面で観たい! ハリネズミと一緒に霧の中に迷いこんでしまいたい。 まるで夢を見ているかのような幻想的なお話。 最後のこぐまとハリネズミのやり取りが凄く好きだなぁ。
「話の話」 いくつかの夢のようなモチーフが絡まっていく作品。 作り手側にはすべて意味があって製作しているんだろう。 ひとつひとつの場面が物凄く思わせぶりなんだけれどもサッパリ解らない。 気にはなるけれども、まぁわからないままでもいいのかな。 でも不可解なことは怖さにも繋がるなぁ。 なんだか怖い作品です。 オオカミの子が可愛いだけに怖い。 しかし”映像詩”とはまさにこういう作品のことをいうのだろう。 不可解さがなんとなくつげ義春に通じるなぁと思った。
「愛しの青いワニ」 人形を使ったクラフト感溢れるカラフルな作品。 切なくて皮肉なお話だなぁ。 人間でやったら救いようの無い悲劇だよね、これ。
「四季」 チャイコフスキーの「四季」に合わせて一組のカップルが季節を駆け巡る美しいアニメーション。 美しいレースや糸、キラキラ光るビーズのような素材を使って美しい自然を描いています。 「四季」というとヴィヴァルディの曲しか知らなかったのですがヴィヴァルディのドラマチックな「四季」と違ってチャイコフスキーの「四季」は繊細でロマンチックな印象。なかなか良い曲だなぁ。
とても美しい作品集でした。 幻想的で夢みたいな世界。何度も繰り返して観てみたい作品ばかり。 でも大きな画面でこの世界に浸ってみたいとも思う。 とりあえず「狐と兎」「霧につつまれたハリネズミ」の絵本をamazonで発注してみた。 このDVDもいつか手に入れたいな。
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