縁側日記 林帯刀 |
2005年11月21日(月) 秋日。 | ||||
霜が降りる季節になった。 畑も山も家の屋根もきらきら光っている。 霜は、日が射してくるとすぐにとけてしまって、 すぐに乾いてしまう。 それでも、ときどき、 雨樋を流れる、ちろちろという音が聞こえる。 とてもちいさいけれど、 岩から染み出した源流のような、きれいな音だ。 夜中に長い笛の音が聞こえて、 なんだろう、鳥だろうかと思ったのだけど、 鹿が鳴いているんだと分かった。 鹿は滅多に鳴かないと聞いたことがある。 山によくひびく切ない声だった。 人の目に触れない山の奥で、 ひっそりと冬を越すのだ。 * なんだかすごいひとに会ってしまった。 話すことがいちいち水晶の柱みたいなのだ。 しっかりと地面に立っていて、 光を吸収しながらさらに強く発光しているかたい柱だ。 僕はそれを見上げて、ただうなずくばかりだった。 気がつけばすごいひとにばかり会っている。 (いや、すごいひとのところに未熟な僕が飛び込んでいるのか) * 「ドストエフスキーの青空」(宮尾節子)を読んだ。 最後まで読んだら涙が出て、 泣きはじめたら止まらなくなってしまって、 トイレへ行って鼻をかみながらしばらく泣いた。 なんてこった。 * まずは、よく動く体にならなければ。 動かすための神経と意思を鍛えなければ。 心に光を。 * ああ、カレン。 あなたの声が聞こえます。 あなたの国からも、あなたの眠る墓地からも、 遠くはなれたこの窓辺で、 あなたのレコードがまわっているのが見えますか。 |
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