縁側日記  林帯刀





2005年11月21日(月)  秋日。


霜が降りる季節になった。
畑も山も家の屋根もきらきら光っている。
霜は、日が射してくるとすぐにとけてしまって、
すぐに乾いてしまう。
それでも、ときどき、
雨樋を流れる、ちろちろという音が聞こえる。
とてもちいさいけれど、
岩から染み出した源流のような、きれいな音だ。

夜中に長い笛の音が聞こえて、
なんだろう、鳥だろうかと思ったのだけど、
鹿が鳴いているんだと分かった。
鹿は滅多に鳴かないと聞いたことがある。
山によくひびく切ない声だった。
人の目に触れない山の奥で、
ひっそりと冬を越すのだ。





なんだかすごいひとに会ってしまった。
話すことがいちいち水晶の柱みたいなのだ。
しっかりと地面に立っていて、
光を吸収しながらさらに強く発光しているかたい柱だ。
僕はそれを見上げて、ただうなずくばかりだった。

気がつけばすごいひとにばかり会っている。
(いや、すごいひとのところに未熟な僕が飛び込んでいるのか)





「ドストエフスキーの青空」(宮尾節子)を読んだ。
最後まで読んだら涙が出て、
泣きはじめたら止まらなくなってしまって、
トイレへ行って鼻をかみながらしばらく泣いた。
なんてこった。





まずは、よく動く体にならなければ。
動かすための神経と意思を鍛えなければ。
心に光を。





ああ、カレン。
あなたの声が聞こえます。
あなたの国からも、あなたの眠る墓地からも、
遠くはなれたこの窓辺で、
あなたのレコードがまわっているのが見えますか。




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