縁側日記  林帯刀





2005年09月29日(木)  彼岸花。


中学校の資料室には、
世界地図やら地球儀やら黒板用定規やら
普段使わないものやもう使わないものが入れられていた。
電気をつけても暗くて、ほこりっぽくて、
棚がいくつもあって、あまり入ることはなかったんだけど。
なぜかそこには立派な鹿の剥製が。
棚の上には狐と雉の剥製が。
誰が置いたのか。
や、寄贈のたぐいだとは思うけれども。
ちょっと怖かったなぁ。
校舎の外から見ると、カーテンの影に鹿の頭部が見えるのね。
窓際に置いてあるから。
二階の暗い窓。汚れたカーテン。その横には何かのシルエット。
分かっていても、見るたびに「びくっ」としていた自分。





理科担当のS先生の趣味は、
動物の骨標本を集めることだった。
自分で標本にすることもあった。
死骸を拾ってきたりしてね。
標本にするわけです。
やり方も話してくれましたがあえて書かないでおく。
先生の家にはそういう標本がたくさんあるらしい。
おもしろい先生だった。
「湯船にはいったら必ずうずまきをつくる」と言って、
やり方をレクチャーしてくれた。

風呂でうずまきのつくりかた
1.湯船に浸かります
2.湯の中で人差し指を立てます
3.指が傾かないように注意しながら
  水面に円を描くように動かします
  (指は水面より下にすること)
4.水がうずまいてきたらそれを消さないように
  だんだんと手を下げていきます

やってみるとなかなかむずかしい。
うまくいくと、水面がどんどん引き込まれていくわけです。
水がうずを巻いているのも分かる。
熱中してのぼせないように注意しましょう。

なにより、そういう話を楽しそうに話していたのをよく覚えてる。
(たぶん僕もおもしろそうに聞いていたと思う)
今もお元気だろうか。





四十九日が過ぎ、
毎日のような来客も絶え、
仏壇に真新しい位牌が加わり、
外されていた襖や障子が元に戻り、
つながっていた座敷が、
座敷と、「でえ」と、奥になり、
いつの間にか季節は秋で、
庭には彼岸花が咲いていました。




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