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■ シングルマザーの100円で今後の人生を決めた俺
ちと月曜日も閑話休題。禁断の製造過程は明日より。
はじめから読む
初めの頃は「死んでる古本屋(中の品物が回転していない)」だなあ、と思い、眼中になかったが、最近、実はすげえ書籍が(かなり埃まみれだが)あると分かって通い続けているわけですが(仮に以後、この店を仮名「ジョーの店」としよう)
ジョーの店は古本屋といってもリサイクルショップみたいなとこで色々なものを売ってる。ただ、埃がかぶって汚い。以前、うちのゴミみたいなコレクションを売りに行ったときに映画のVHS20本で200円という買い取りレベルだった(とはいえ、DVD主流のこの時代にVHS買い取るくらいは良心的だと思う)
また、驚くべきことに、このジョーの店のオヤジはとても優しく、返品が利くのだ(爆笑)例えば、買った本のページ欠け、カビなどの汚れが激しいときに返品(とはいえ、同価格のものと交換)が効く誠に稀有な古本屋である。
俺はいつもながらいい本が無いか物色していたところ、タルコフスキー監督の「ストーカー」の映画パンフレットを200円で見つけて(恐らく古本でも一般価格2000円)そのわきに「フィフス・エレメント」のパンフレットも見つけ(何故か、これも高価)これは今日は放置と、歓喜を噛み殺していたところ、子供の泣き声が突然聞こえた。
いつの間にかレジの前にお腹に幼い赤子を抱いた女性が立っていた。
そして、驚くべきことに、その横にはパジャマのままの三歳くらいの女児が立っていてきょろきょろ店内を見渡していた。
恐らくシングルマザーであろうか、着衣も華美ではなく、持っているバッグもブランド物でなく、子供が持つような玩具のようなバッグだった。
それでも母親自身、こぎれいにしていたし、子供も貧乏くさくはなかった。強いて言えば貧しくとも清く(意味は違うが)という感じの親子だった。
母親はバッグから、その三歳児が着ていたのであろうピンクのジャンパーとか三着を出して「これ、幾らになりますか?」とジョーの店のオヤジに聞いた。
ジョーの店のオヤジは子供に「可愛い服だねえ」とか愛想をふりまきながら、服の査定をしているが、顔つきを横目で見ると、
明らかに困っていた
もしも、俺が持っていったら「ゴミ扱いで引き取れない」か、良くて「3着で30円」だろう(←ボってるわけではなく全うな買い取り価格。しかも良心的)
俺はジョーの店のオヤジの人柄の葛藤の苦しみを共有した(なんも、この取引に関係はないのだが)
オヤジは、
「これは・・・3着で100円ですね」
母親は(え?100円にしかならないの?)という表情を浮かべたのを俺は見逃さなかった。確かにそうだろう。一般的にブックオフやハードオフの買い取りなんか、これより少額なくらいだ。しかし、オヤジは頑張ったほうなのだ。
母親は、
「はい・・・それでいいです」
オヤジと俺、鼻をすすって号泣
その親子は100円を受け取って、寂しく肩を落としたまま、店を出た。
夜の9時。
俺はそれを見てひとつのことを決めた。
うちの娘さんや奥さんに、こんな思いなどさせたくはないという名状し難い恐怖に全身が襲われた。そして、その恐怖は一瞬にして払拭された。ふっきれたという感覚が正しいか。
そして、俺はタルコフスキー監督の「ストーカー」を200円で買って店を出た。
2012年06月18日(月)
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