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 越えちゃいけないライン

エロと芸術の境界線というのがある。「これは芸術作品です」と謳ってしまえば、エロが芸術に瞬間的に変化するわけなのだが、中には勿論、芸術的過ぎてエロさがなくなった完全に分類できるものと芸術作品でなく、単なるエログロナンセンス(古っ)のものもある。なんというか、このエロと芸術というのは似て非なる人間の勝手に決めつけた価値観の対極なわけである。

だから、映画とかでも芸術作品なら何でも作っていいのか?というと、そうでもなく、最近になって異常な映画作品が増えているような気がして越えちゃいけないラインをすでにオーバーランしているような気がする。

(以下、検索は自己責任)

ラース・フォン・トリアー監督の一連の作品、ミヒャエル・ハネケ監督の全て(笑)の作品が何か映画のモラルの壁を壊してしまったような気がする。しかし、この二人の監督の作品はラインをまだ越えてない。

以前にもちらりと書いた「Human sentipede人間ムカデ」「人間ムカデ2」で俺は限界超えてるなあ、と思ったが「セルヴィアン・フィルム」に到っては越えちゃいけないラインでなくて作っちゃいけないラインだと思う。もはや、こんな作品はトラウマどころではない。

しかし、それでも海外の知人に言わせると、

「日本の三池崇史の映画も十分、越えてるだろ」

と言われるのだが。



トリアー監督の作品はバッドエンディングなだけで変な余韻は残さなかったのだが最近の「アンチクライスト」「メランコリア」に到っては変な余韻=トラウマを残すのでトリアー監督も磨きがかかったな、と焦る。

ミヒャエル・ハネケ監督は、ようやく「ホワイトリボン」でまともな作品(笑)作ったのか、と思いきや、それまでは全ての作品が観賞後、異常な余韻=トラウマを残すわけだった。いや、けど油断できないけどね、ハネケ監督は。


ただ、後者のムカデとセルビアはトラウマという問題ではない。ただ後味が最悪に異常に悪いだけの映画だ。救いが無い。まるでオリバー・ストーン総指揮の(確か、これもセルビア人かボスニア人監督だったような(汗))「セイヴィア」のように救いの無い場面の連続で、とにかく観賞後は気持ちさえ悪くなってくる。


俺は個人的にこういう変な、異常な余韻=トラウマを残すものは評価できるが、後者のムカデとセルビアは無理。ただ不快なだけ。



さて、この説明や筆舌に尽くしがたい変な余韻、異常な余韻というと忘れられないのが、シャーリィー・ジャクスンの「くじ」という小説である。

少年時代、学研(学研ユアコースシリーズ)で発行されたブレイク前の荒俣宏先生監修の「世界の恐怖怪談」。以前に過去日記でもさらりと書いたが、ぶっちゃけ、8年前、この本を8万円でヤフオクで売って未だに後悔している書籍だ。取り戻したくても中々出品されない超レアな本である(まあ、このヤフオク事件の件は前にも書いたけど、既に全て書いているので後日、アップしますよ(涙))

この「世界の恐怖怪談」という本は単純に「おっかなーい話」や「怪談」など集めていない。タイトルに偽りあり、であり(爆笑)、よくこんな作品群を子供達に見せやがったな、という作品が揃っている。例えばいまや古典的になり、様々な映画や作品の元ネタになった教訓的小説「猿の手」やラブクラフトの捻りの利いたラストの「アウトサイダー」「冷却」や、「悪魔辞典」で有名なアンブローズ・ピアスの「絞首刑の男」など近代の作品の元ネタを集結した書籍であり、挙句の果てに「太陽がいっぱい」のリプリー・シリーズのパトリシア・ハイスミスの「怪獣のすむ島」(パトリシア・ハイスミスはかたつむりが超大好きなことで有名でかたつむり作品を複数書いている(本当)本作品は巨大なかたつむりが出てくる)など、とにかく、ハイレベルなセンスで監修された奇跡の書籍である。

このなかでも群を抜いて光るのがシャーリィー・ジャクスンの「くじ」で(シャーリー・ジャクスン短編集で「くじ」の題名になって翻訳されている短編集もある)ある。

これについては検索すれば和訳サイトが出てくるので検索してもらえれば直ぐに出てくるので読んでもらえば判るが異常な余韻を残すトラウマものの作品である。個人的には未だにこのトラウマが抜けきれていない。

当時、この作品が「ニューヨーカー」誌に発表されたときにネットもない時代なのに定期購読不買運動が世界中で起こり、新聞の一面を飾るほど大騒ぎになった短編小説である。シャーリィー・ジャクスンが後にこの騒動によって寄せられた読者の賛否両論(いや、ほとんどが否だけど)罵詈雑言の手紙を紹介しているが内容は正に現代の「ブログ炎上」と酷似している。

スプラッターな残酷な描写やグロテスクな描写もラストの一行まで一切ない。
しかし、これほどまでに異常な余韻を残す小説はなかなかない。

子供の頃はすごく気になって気になって悲しくなっていた記憶があったが、いま思えば、とんでもない凄い小説だったことは間違いない。


俺個人的には斯様な越えちゃいけないラインを踏んでいる状態で観賞者や読者の心に楔を打つ作品が好きなんよー。







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2012年05月16日(水)
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