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■ 貫井徳郎「灰色の虹」を読んで
貫井徳郎さんの新作「灰色の虹」を読む。
デビュー作「慟哭」では書店でおもいっきり
ネタバレした店員の手書きのポップがあり、
そのネタが観所かと思ったら、ネタバレ
そのものだった（以後、その書店では本を
買っていない。最近、書店独自の手書きの
オススメのＰＯＰが流行っているが、書き方
が下手すぎる店員が多すぎる）しかし、
それでも面白かった作品で、以後、出る作品
は読んでいる作家だ（同じ年齢ってのもあって
凄く敬服している）
昨年２００９年ベスト書籍は桜庭一樹の
「私の男」がベストだったが、２０１０年は
この「灰色の虹」がベスト１になって終わるで
あろう凄い作品。
粗筋は冤罪により恋人、家族、仕事を失った
男が復讐を企てる。自分を罪にした刑事、検事、
弁護士が殺されていくが、完璧ともいえる
復讐を遂げ『絶対に捕まらない』主人公。警察は
「奴は軍の特殊部隊の訓練でも受けたのか？」
と焦り、毒づくが、後半、「慟哭」以上の
驚くべきラストへ進む下りは自分自身も驚いた。
やはり、この人の作品には外れは無い。
決して大仰なラストではない。むしろ
シンプルなオチなのだが（それでも驚嘆
必至ですが）全体的な物語の運び方が秀逸で
上手い。文章が上手い。
例えば東野圭吾さんは文章で騙すという
よりインダストリアル（理工系）なトリック、
プロットで驚かせるが（文章で騙したのは
「容疑者Ｘの献身」くらいか？）
貫井さんは文章の全体的な配置で騙すのが
毎度毎度、秀逸過ぎる。今回のトリックは
大仰なものでなく、むしろ切な過ぎて
心に刺さる読者への凶器のようなものである。
また数々の推理作家が挑んでいった犯人が
「絶対に捕まらない」方法に一つの指針を
与えたような作品でもあるような気がします。
騙された。素晴らしい本に騙されるのは
とても気持ちがいい。
そして、最後の数頁。恐ろしいほどの
余韻を残す貫井さんには珍しい締め。
また、貫井徳郎さんの作品の一連の
テーマのベクトルの韻を踏んでいるのが
とても良かった。
今年は良い本の当たり年かも知れませんね。
Remarks 14th Oct 2010
2010年09月25日(土)
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