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2005年08月18日(木) その費用はどこに消えたのか

16日に宮城県沖でおきた地震で、天井パネルが落下し26人の負傷者を出した仙台市のスポーツ施設を調査した結果、今までの地震の経験から設置するよう求められていた揺れ止めが取り付けられていなかったことを明らかにしました。

この「揺れ止め」は、ワイヤが長いと地震時に揺れが大きくなり破損を招くので、ワイヤー同士を斜めにつなぐことで揺れの振幅を短くするというもので、この施設の仕様書にはその「揺れ止め」の設置は盛り込まれており、設計会社も施工業者も「設置したはずだ」と答えているそうですが、実際の調査では「設置した痕跡は無い」のだそうです。
このスポーツ施設は民間資金を活用するPFI事業を利用して仙台市が建設した施設なのですが、このPFI事業と言うのは、乱暴に言ってしまえば役所などが行うべき公共事業をより効率よく運営できる民間に代行してもらうというもので、役所はその監督をする立場にある訳です。そんな中で、仙台市都市整備局は「触れ止めが実際に使われていたか確認していない。建築確認は計画の確認で実際に仕様通り工事が行われたか確認する義務はない」と答えているそうで、この都市整備局がこの施設を監督しているわけではなく、単にそのほか多くの建設物と同じレベルで「自分たちの仕事はここまでよ」と言う線引きを示したものだとは思うのですが、では「実際にできたものと仕様書(設計書)とを比べるのは誰の仕事なの?」と言う疑問は解決されませんね。
仕様には盛り込まれているにもかかわらず、その工事は行われていない。しかし、設計者も施工業者も「工事をした」と認識をしているので、当然その分の工事費は請求されているはず。こういう事を「手抜き工事」とか「空請求」とか言うのではないですかね。そのようなことが役所主導の施設建設で行われたというのは、橋梁工事の談合などと同様に由々しき問題なのではないかと思うのです。

例えばダムを例にとると、川をダムでせき止めるとダム湖ができます。しかし、単にせき止めただけでは、水は湖底から地下に浸透して溜まりません。そこでグラウティング工事と言う地盤改良を行ってそこがダム湖になるようにするのです。平たく言えばダム湖になる部分の地下にセメント(コンクリートになる前のセメントと水とAE剤を混ぜた段階wp「セメント」といえば良いのか「コンクリート」と言えば良いのか分かりません。ここでは便宜的にセメントと表記します)を流し込んで、多少は水が流れるけれど、多くの水が浸透し過ぎないようにするのです。このグラウティングは、まずボーリングを行って深い穴を掘って、そこに差し込んだパイプからセメントを圧入します。この時、水のような薄い濃度のセメントから始まって何段階かにわたって濃度を濃くしていくのですけれど、兎に角あのダム湖を作る面積に行う作業ですから、膨大な量のセメントが使われることは想像できるでしょう。この時、本来はセメントを指定された割合より少ししか使わなかったらどうなるでしょう。一箇所ではほんの少しのごまかしでも、それが全体ともなると何トンものごまかしとなり、その分だけ経費が浮くことになります。そしてそうやって建設されたものは見た目は立派でも本来の性能が発揮できなかったり、思いもかけなかったところで壊れてしまったりするのです。このようなごまかし・手抜き工事は大手の企業やその企業体(JV)が主体でやる場合もありますし、それらはしていないつもりでも、実際に作業を請け負っている会社がそういうことをしてしまう場合もあります。これは今まで(そしてこれからも)建設業界全体が常に抱えている問題なのです。←ダム建設業界だけの問題だというのではないですからね。

今回の「揺れ防止」は義務や規則ではなく、国土交通省が「つけることを求めている」だけでしかないという事ですけれど、少なくとも仕様書には記載されており、建設業者も「つけたはず」といっているのであれば、その程度の差こそあれ、きちんと問題を解決しなければ、結局は「お役所主体の仕事は、金儲けのためにある。ごまかし放題。」と思われてしまうでしょう。きちんと調査をして解決して欲しいと思います。

それにしても、この吊っていた天井材にアスベストが含まれていなくてよかったですね…


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