1日雑記

2001年06月18日(月) 2回目 学校はひまです

洋は再び覚醒した。
『…これから何度覚醒するのだろう?』
自らの置かれた状況を再確認し、これが現実であることを知る。
どうにもならないことを知る。
そういう時、人は逆に冷静になれるものだ。
それをあきらめというのか。
洋は、この状況を打破できるとは思わなかった。
…と、いうよりできないと感じていた。
どうしようもないくらいに。
だから洋はこんな突拍子もないことを考えたりしていたのだろう。

冷静に周りを感じてみる。
…確かに「居る」。自分以外の誰かが。
一人(肉体を持たないのに
   この表現が適当であるかはともかく)ではない。
かなりの人数が確かに居る。
感覚をさらに収束させる。
…ふと、誰かの意識が流れ込んできた。
洋は戸惑う。経験したことのない感覚。
そいつはあせっていた。自分が覚醒したときと同じように。
洋は彼を励ませなかった。落ち着かせなかった。
否、自分の考えを伝えるすべを知らなかった。

人は自分の意思を他人に伝えるため言葉を発達させてきた。
人が進化をするにつれ言葉もまた効率のよいものへと進化してきた。
さらに人は言葉から時間的要素を取り除くことに成功する。
それを文字と定義した。
文字の出現により、その瞬間でしか存在できなかった言葉
――意思を伝える行為――はそれ自身ではないにせよ
多くの時を経て、なお残されることとなる。

もし人に言葉がなかったのなら。
たとえば犬や猫のように鳴くことしかできなかったのなら
人は進化できなかった。
感情を伝えることはできても意思を伝えることはできない。
それは進化を一代でおわらせる可能性を高くするから。
まれであるにせよ、天才は出現し、またその思考は残される。
それを土台とし、現在がある。

言葉が壊れ始めている。
日本では特に。
それは進化に逆行する流れでしかないのかもしれない。
進化とともに言葉があったのだから。

洋はまた考える。
人の意識が流れてくるなら、自分の意識を流すことも可能ではないか?
言葉に頼る必要がない。
いわば完全なコミュニケーション。
そして洋は試行錯誤しながらだんだんこの世界になれていく。
まるで生まれたての赤子のように。


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