異界への扉

出す小説すべて面白いF.P.ウィルスンンの「異界への扉」読了。今度の主人公は始末屋ジャックだー。

F.P.ウィルスンはリーダビリティ抜群のモダンホラーの書き手で,トランシルバニアの古城に宿泊したナチスが吸血鬼に襲われる「城塞」,相手に触れるだけであらゆる病気を治してしまう能力を身につけた医師の苦悩を描く「触手」,謎の生物ラコシと戦う"始末屋ジャック"もの「マンハッタンの戦慄」,第二次世界大戦で日本の闇の宗教団体がアメリカ全滅の秘法復活を企む「黒い風」,どれをとってもオモロイオモロイ。

その後F.P.ウィルスンはこれらの個別の作品を1つのシリーズにまとめあげる作業を始めます。これが"ナイトワールドサイクル"と呼ばれるもので,今までの怪異はすべて太古の昔から連綿と続く悪と善の戦いの一面だったことが明らかになります。この設定は「またかよ」って感じで,なんでアメリカ人は善悪二元論が好きかなあとか思っちゃうんだけど,とにかく本は面白い。

このシリーズの中でもっとも魅力的な主人公が"始末屋ジャック"です。プライバシーの漏洩を何よりも恐れ,住所や氏名は誰にも知られず,身分証明書もカードも持たない男ジャック。彼の仕事はとにかく妙な揉め事の解決で,ジャックならなんとかしてくれると様々な依頼が来ます。

「異界への扉」は,UFOとか超能力とか政府の陰謀とかを心から信じている人たちが会合を開くホテルが舞台です。ジャックと彼らの会話はまさにトンデモ本の世界で笑ってしまうんだけど,そこで事件が起き始めるんですね。しゃべる猿とか,超人的な能力を持つ黒づくめの双子とか,あやしいキャラも満載です。

相変わらずのノンストップ小説で,最後の方まで読んでもいったいどういうエンディングに向かうのか全然見当がつかない。やはりこいつはB級の天才だな。
2002年09月18日(水)

ま2の本日記 / ま2