いまの波が来るまでは、自分の人生の底はもう過ぎたと思っていた。「遠い昔」を思い出して、あれより下はもうないのだ、と言い聞かせていた。大きな間違いだった。歳を重ねるにつれ、「あれ」が霞んできたことで、僕はまた底に入りつつある。