想
目次|過去|未来
2001年11月26日(月) |
独白 「オオカミと嘘」 |
自分は「嘘吐きオオカミ」の筈だったのに ふとしたはずみで気付いた時にはとっくに嘘に喰われていて 皆を騙して喜んでいた羊飼いより余程、惨めな有り様だった。
体が重い。 まるで、腹に石を詰められた間抜けなオオカミのようだ。
ひとつ違うのは この腹でゴロゴロと硬い音を立てているのが 吐き続けてきた嘘の、塊だということくらい。
巧妙な嘘のつもりだったんだ。 いつでも取り繕えるように、しっかり憶えてもいた。 吐いた嘘の半分は、想い出の映画の半券みたいに 全部、心の隅に重ねておいたんだよ。 それが、どうやら、誤算だったらしくて。
・・・もうひとつあった 憐れなオオカミと違うところ。 この塊を腹に押し込んだのは ヒーローの狩人なんかじゃなく 紛れもない過去の自分だということ。 これじゃぁ、誰かに哂ってもらうこともできない。
ましてや、救けてくれ、なんて。
|