英語通訳の極道
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2003年06月23日(月) 日本語の音と表記(1): ユダヤ人を好きとは?

アメリカにいた頃、ある韓国人の女の子と知り合った。共通言語は英語なのだが、アメリカに来て間もない彼女はまだ片言しか話せない。

趣味は何か、何が好きかという他愛もない話をしていると、彼女が子供っぽい表情でうれしそうに言う。

「アイ・ライク・ジュー」

「えっ?ジュー‥‥?ジュースが欲しいの?」
「ノー、ノー。ジュー」

「ジュー?ふむ‥‥。ユダヤ人?」
「ノー、ノー。ユーノー。ライオン。エリファント‥‥」

「オー!ズー!」
「イエ〜ス。ジュー!」

動物園をユダヤ人と間違われては大変だが、どうやら韓国人は/z/の発音が苦手なようである。ちゃんと聞き分けているのだが、自分で発音するのは難しいらしく、/z/を/zh/で置き換えている。

韓国語は音の響きが日本語とよく似ている。アメリカにいる時、街で韓国人が話していると、日本人と間違えて思わず振り返ったものだ。しかし、韓国語から/z/音が抜け落ちているというのは、新しい発見だった。

この韓国人女子学生の例が示すように、論理的には存在してもよいはずの音が、母語から欠落していると、その音に対する感度が磨かれず、発音できないだけでなく、しまいにはそういう音が存在するということすら意識しなくなってしまうことがある。


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