英語通訳の極道
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2003年04月29日(火) カプチーノ生みの親

コーヒーの歴史について、ひとつ新しいことを学んだ。

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ローマ法王ヨハネ・パウロ二世がバチカン市内で列福式(beatification)を行ったと、4月27日付のThe New York Timesと4月28日付の読売新聞が報じている。

カトリック教徒ではない私のような者にはなじみが薄いが、「列福」とは、死者を福者の列に加えることを意味する。「福者」とは、大辞林によると「カトリック教会が生前の聖徳を認めて死者におくる敬称」。

ちなみに、福者は「聖人の前段階」(読売新聞)で、列聖(canonization)されると聖人(saint)になる。

「福者」と「聖人」の関係を、The New York Timesの記事はこう説明している。

Beatification is the last formal step before possible canonization and requires evidence of one miracle after the person's death. Evidence of a second miracle is required for sainthood.
つまり、「福者」になるには奇跡がひとつ、「聖人」になるにはさらにもうひとつ必要らしい。

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さて、今回列福された6人のひとりが、マルコ・ダビアーノ(Marco d'Aviano)神父だ。

フランシスコ会(the Franciscans)から分派したカプチン会修道士(the Capuchins)のために巡回説教師(itinerant preacher)をしていた。

このダビアーノ神父。「1683年、ウィーンがオスマン帝国軍に包囲された際、反目しあっていた欧州キリスト教諸国の騎士たちを和解させ、欧州側に勝利をもたらしたキリスト教世界の功労者」なのだ。(読売新聞)

Those beatified Sunday included Marco d'Aviano, an itinerant preacher for the Capuchins, a branch of the Franciscan friars. Born in Aviano, northern Italy, in 1631, the preacher led Catholics and Protestants in prayer on the eve of the battle for Vienna, Austria, which was critical in stopping the advance of Turkish soldiers in Europe.

John Paul praised his ``courageous'' preaching and said the Capuchin was ``inspired by the circumstances to commit himself actively to defend freedom and the unity of Christian Europe.
広辞苑によると、「カプチン」という名称は「修道士が長く尖った頭巾(カプッチョ)をかぶることに由来」するらしい。

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さてここからは、語り伝えられている伝説(legend)だ。オスマン帝国軍は敗走後にコーヒー豆を残していった。それをダビアーノ神父が煮出して飲んだところ、苦すぎたのでクリームとミルクを加えて薄めた。それがカプチーノの原形になったという。

According to legend, cappuccino owes its name to the preacher's fame. After the Turks were defeated by the outnumbered Christians, they fled, leaving behind bags of coffee, according to the legend.

The Viennese decided the coffee was too strong and diluted it with cream and milk. The milky brown color of the frothy drink reminded some of the color of the preacher's robes, and thus the name cappuccino was coined.
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カプチーノ誕生の背景には、イスラム教対キリスト教という宗教対立の歴史があった。

そんなことを考えながら、久しぶりにエスプレッソマシンを取り出して、一杯のカプチーノを味わった。

芳醇な香りがたちまち部屋を満たし、甘いミルクに包まれた深煎りコーヒーの味が口の中一杯に広がる。頭の中では、三百年以上前の歴史が現代にオーバーラップしてぐるぐる巡る。舌に残ったあと味は、


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