英語通訳の極道
Contents<< PrevNext >>


2003年04月17日(木) ゆっくりと静かに壊れていく

Continued from previous page.


アメリカへ渡って数年も経つと、だんだんと日本語への配慮がおろそかになる。

日本語を話しているときに、適切な表現がすぐ口から出てこなくなる。代名詞が増える。知らず知らずのうちに、不必要な間合いが文章の流れを乱す。

待てよ。この症状って‥‥よくよく振り返れば‥‥

*    *    *

外国語を学んでいる時、もがき苦しむ姿と同じではないか!

母国語であるはずの日本語が、知らない間に外国語になっていく‥‥

決定的だったのは、日本語の文章を見ていたある日のこと。突然、漢字が、意味の塊としての文字ではなく、まるで絵か図形のように見え始めた。ずっと使っていたはずの漢字なのに、何かおかしな線の組み合わせに見える。そして、その一つひとつが漢字として正しい形なのかどうか、直感的に即断できない。

私の頭の中で、文字のイメージが壊れていっている!

*    *    *

一方で、英語はどうか。

普段は不自由を感じていないものの、やはり第二言語だ。どこかスポッと抜けている知識や、イメージとして描けない抽象的な言葉も多い。自分の得意分野や専門分野、日常生活ならともかく、それ以外の知的な思考あるいは会話の途中で、たまに表現を探して立ち止まる自分がいる。

英語では、まだ完全にすべての思考を行えない。表現力もボキャブラリーもイメージも足りない。また、日本文化にかかわる部分では、とうてい英語で表現しきれないことも多い。

思考のための言語が揺れる。頭の中に存在する概念を言語化できない。歯がゆい。脳が欲求不満でぐらぐらと煮詰まる。イライラが募る。と同時に、恐怖を感じる。



   ↑クリックするとメッセージが変わります(ランキング投票)
失いつつある!

*    *    *

伸び悩む英語、落ちていく日本語。

外国に長く住んでいる人が陥る、一番怖い状況だ。


To be continued...


Taro Who? |MAIL

My追加