英語通訳の極道
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2003年04月04日(金) こんなもんですよ、通訳の現実は

ちょうど家を出ようとするところだった。電話予約してある新幹線は一時間後。

二日間の仕事の予定。一日目は会議開始が早いので、前日ホテル泊。しかし、その夜は帰宅して、翌日また朝から新幹線で出かけるという手はずだった。ところが、運が良かったのか悪かったのか、家を出るときに受けた電話はクライアントから。

「スイマセン。一日目なんですが、午後5時からの会議もお願いできないでしょうか?」
「えーっと‥‥できない理由はないんですが。となると、明日も宿泊になりますね」
「よろしくお願いします」

さあ、それからが大変だ。宿泊などの変更をしなければならない。荷物を置いて、電話をつかむ。まず新幹線を最終に変更。これで一時間の時間稼ぎができる。睡眠時間は減るが仕方がない。

さて次は、ホテルを連泊に変更。ノートパソコンを立ち上げて、ホテルのWebサイトへ。変更機能がない。仕方なしに、2泊目を新規予約。よし、これでアシとネドコは確保した。

次にお泊りの準備だ。一泊だけなら、最小限の着替えだけをブリーフケースに詰め込んで、身軽に行くつもりだったが。二泊となると、荷物も増える。仕方ない、かばんを詰め替える。スーツもガーメントバッグに詰めて、Dockersに着替える。メールをチェックして新しく届いた資料をプリントアウトする。

ああ、オフクロにも電話しなくちゃ。駅からで良いか。テレビの録画は大丈夫か?MPEG1で毎日3GB以上予約してある。パソコンのHDD容量は‥‥ぎりぎりセーフ。

急がないと、あと10分しかない。電気・ガスをもう一度チェックして、かばんを抱えて外に出る。まずい、雨が降りそうな天気。傘は荷物になる。一瞬の判断。要らない。

この辺りは交通の便が良くない。5分ほど駅に向かって走ったところで、タクシーを見つける。へーイ!運が良い。

ようやく出張へ出発。ま、こんなことはめずらしくない。

さて、肝心の仕事のほうは?これが大変なことに。

翌朝8時半に打ち合わせ場所に行くと、PHSに担当者から電話が。
「スイマセン、空港で体調を崩し、行けなくなりました。別の者が資料を持って行きますので」

さあそれから、予期しないことの連続だ。11時からの会議が突然加わった。夜のディナーの通訳をお願いされた。翌日は、8時45分からの会議も出ることに。あれよあれよという間に、内容も知らない、資料もない会議が次々に増える。今回はほとんどが準備のできない実戦になりそう。

しかし、気心が知れたクライアントだ。できるだけのことはしたい。根性を決めて、バトルモードへ。細かい表現にこだわらず、メッセージを正しく伝えよう。会議の目的は?前回会議からの進捗・変更は?期待する結論は?予想される課題は?あなたが一番訴えたいメッセージは?矢継ぎ早に会議の背景知識を10分ほどで仕入れる。

ま、なんとかなるさ。Relax, man.

それにしても、長かった。一日目は、9時に始まり、午後6時まで次々と会議の連続。空き時間は打ち合わせ。椅子に座ると、猛烈に疲労と睡魔が襲ってくる。

しかし、まだディナーがある。そのあとは翌日の打ち合わせ。ところが、ディナーへの移動待ちのため別室で待機していると、PHSに電話が。

「スイマセン。声をかけるのを忘れてました。一人でタクシーに乗って来てください。場所は、どこそこ通りの何とかという店です」
「はーっ‥‥りょうか〜い」

ディナーの時には、疲労で意識も朦朧、頭がガンガンと鳴っている。店内の雑音で会話も良く聞き取れない。幸い、もう一人の通訳者が元気で、キャッキャ言いながら頑張ってくれたので助かった。ただ、多少シモネタ系の話題だけはこちらが訳す。さすがに若い女の子には可哀想。

盛り上がったディナーが終了したのは、夜の10時。ところが、これから翌日の打ち合わせがある。私は横で聞いて背景情報を得るだけなのだが。ふらつく足を引きずってオフィスに向かう。

さあ、それからだ。またいろいろ意見・議論が出て、なかなか終わらない。結局、他の人達を残して私一人がホテルに向かったのは、夜中の1時を過ぎていた。CNNでイラク戦争のニュースをチェックして、ベッドに入ったのが2時半。翌朝は、7時起きだ。

ま、こんなもんですよ。日常は。



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が勝負なもんで‥‥


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