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2007年03月18日(日)   プチ家出。  

ジンジャーエールはまだ冷たいけれど、
一緒に頼んだポテトはもう大分冷えていた。

ああ、人生もう何度目だよ、のプチ家出。
ゴリ邸から直ぐ近くのモス。

さっきからゴリさんから電話が鳴り響き、
何処に居るの?というメールがワンサカと。
天邪鬼なワタシは、電話は
着信ボタン→切断ボタンで抵抗し
メールは返信せず。

これから如何しようとタバコだけふかして時間をやり過ごす。

売り言葉に買い言葉で「別れよう」なんてメールしちゃったし。
きっとゴリさんの性格上、話す気が無い(着信速攻切る何度もしたし)
相手と続ける気はないって散々言ってたから、
別れようは言っちゃ不味かったよなと思いつつ
引っ込みがつかない土曜の夜。


さすがにモスに来て1時間が経過しようとしていて。
本も持ってないし、携帯で遊ぶにも電池が無いし
時間を潰せるものが何一つ無い私は、
一時間同じ場所に居続けただけでも頑張ったほうで(汁


さっきから何度もフロアの入り口を見ては、
来る筈の無いゴリさんの姿を想像して。


迎えに来るかもしれないゴリさんの姿をひとり思い浮かべ。



家出するたび、何処かで迎えを期待していた私を思い出し。
ああ、我ながら困った野郎だと重くなる。


そうなんだ、迎えに来た奴は1人も居らず。
ワタシが何処にいるか、わかるやつは居なかった。


ワタシは何をして欲しいのか。
何を期待しているのか。




そろそろ店を出ようと思ったところで、
ゴリさんの姿が目に入った。


いや、正直に言えば、
今目の前で起こっている状況が解らなくて、
ゴリさんだと頭の中で認識できたのは、
奴がワタシの目の前の席に座ってからだ。





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ごめん、オレが悪かった。




手を握ったら、とても冷たく。
いろんなところを捜し歩いたんだと言う事が痛いほど伝わってきた。



一緒に帰ろう



冷たい手をワタシの手で包んだところで。
低血圧の貧血症のアタシでは暖められる筈も無く。
安心したように、にっこりと笑うゴリさんを見て
ドンドン涙が溢れてきて。



手を引かれて店を出た。
店の外は、思った以上に風が冷たく。寒かった。








遠い昔、おそらく、最初の人生プチ家出は。
母が自殺未遂をやらかしたとき。
ワタシは幼稚園前だったかと思うが、最期の場面を見たくなくて。
ふらりと家を出た。
つっても、祖母の家だったため、土地勘も何も乏しく。
散歩でよく連れられていた土手に座り込んでいた事があって。
迎えに来たのは、祖母だった。

ワタシをみるなり、安堵したように笑って


「お母さんはもう大丈夫、一緒にかえろう」


そういって手をつないで歩いて帰った。



出た理由も、何も聞かずに、ただ、暖かかった。



おそらく、迎えに来たのは、祖母ひとりだった。
ワタシの家出、の時に。
子供心に、祖母の愛情を感じて。
帰るまでずっと泣きじゃくっていた気がする。





ゴリさんと家へ帰るとき。
なんだか、それを思い出していた。






何度かの携帯電話ブッチ切りしていた私の後ろで
店内の音楽を聴いて目星をつけていたこと、
メールのやり取りで、アタシを一回怒らせたら
いつか電話に出るという事、

「ワタシ」という人間を理解し、
「ワタシ」という人間を愛してくれていること。


ああ、ワタシは、このひとについていこうと、思えた。



事後談で、アタシを見つけるまでの経緯をゴリさんから聞いた後で。
泣きまくってメイク落ちてるし、旨い事喋れなかったけれども。


もう(プチ家出は)しないと、言った。


嬉しそうに、ゴリさんが笑った。




それだけでいいと、思った。
プチ家出癖。あれから今まで、ずいぶん長い事尾を引いていたけれども。
ワタシはようやく、安心できる場所を見つけられた、ような気がする。
出て行く必要の無い、ワタシの居場所がある、そんなところを。



家出して心配かけて、迷惑極まりないやり方でしか、
自分に対する愛情を推し量れなかった、自分を
ワタシはようやく、卒業できる、そんな気がする。



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