囁き
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2001年04月22日(日) 煙草の焼け跡

 左腕の14個の煙草の跡。それぞれが、痛みを持っている。身体ではなく、心の。傷つけてしまった痛み。情けなかった痛み。忘れたりなんかしない。忘れられるわけなんてない。

 一番最初は、酷く人を傷つけたとき。軽い言葉が、軽い冗談が傷つけた。罵声を浴びせ掛けられ、関係を断ち切られた。こんな事を二度としないように、身体に刻み込んだ。

 裏切られた痛みもある。あることもない噂を流された。それも、僕の関係のうち、二つに。身に覚えのないことでなじられ、時には殴られた。一人、部屋の中で涙をこぼした。信じてくれていた人もいたけれど、信じた人の方が圧倒的に多かった。つまり、僕がそうするかもしれないと思われていた。僕が女性を犯すなんてことを・・・誰だか分かったとき・・・その人は、告白されて僕がふった人だった・・・僕は彼女になにも言わなかった。ただ、自分を笑いながら、静かに煙草を押しつけた。

 人を裏切ったときにも、押しつけた。相手の相談を軽く聞いていて、大きな話になってしまったとき。対立する話は、規模は話半分だと考えている(いまでも)。人は、他人にそういう話をするとき、自己弁護的な話に曲げてしまうから。内容や、言い方で。けど、そのせいで酷いことになってしまった。未遂を起こした彼女は、幸い命に別状はなく、今は元気に生活している・・・はず。暫く連絡をとっていない。少なくとも、知っている限りは元気に生活をしていた。

 一番多い理由は、自分が情けなかったとき。高三のときに愛した人(昔の日記に書いてある『姉』)、そのときに押しつけたものは多い。5個。
 彼氏がいた『姉』に対して、自分を抑えるため。
 抑えきれなくなる自分への情けなさ。
 愛という感情で強く感じてしまった過去の汚れ。
 相談をする『姉』に対して、感情を隠し続けた自分への情けなさ。
 『姉』に対して心を許していく自分への戒め。

 心を許せば許すほど『姉』の魅かれていくのを知っていたし、『姉』が僕を心配し、考えてくれる。そして、必要としてくれるのと同時に、違う意味で僕は必要としていく。・・・していったんだな(苦笑)。傷が見つかって、泣いてくれたよ。怒ってくれた。当たり前だろうけど・・・嬉しかった。僕に対するどういう感情であれ、怒ってくれたから・・・必要としてくれるのが分かってしまったから・・・

 そして、元カノを守りきれなかったときにも。守りきれなかったというか・・・僕が、元カノに対してちゃんと包んであげられなかったから。自分が許せなかった。守るって誓っていたから。彼女が疲れて、自暴自棄ともいえる状態になったとき、ちゃんと癒してあげられなかった。情けなかった。

 元カノを裏切ったときも。守るって誓っていたのにって。昔書いたから、詳しくは書かない。カラオケの最中で抜け出して、つけた。歌の大半が、僕の傷をえぐっていて、止められなかった。あの時、無意識に呟いた謝罪は、誰に対してだったんだろう。元カノと、いまの彼女?

 怒りの感情を消すために押しつけたこともある。友人が、その彼氏に暴行を受け、指に深い傷を負ったとき。彼女はパティシエという夢を打ち砕かれた。キレた(僕はめったにキレない。そのときに、自分がどうなってしまうかがわかるから。怒りの激情に襲われた身体が、意思を反して、僕の持っている全ての技術で攻撃してしまうから)。最初はそれでもいいと思っていた。けど彼女の言葉に、怒りを消さなければならなかった。せめて、キレないためにも、自分の感情を抑えるために、押しつけた。怒りは、まだ胸の内にある。その男に出会ってしまったら、どうなるかは僕にもわからない。

 仮面をかぶるために押しつけたこともある。人に会わなければならないとき、自分の感情を隠しきれなくて、押しつけた。その感情は、悲しみやつらさ。過去の罪への怒りなど。つけた痛みで、仮面をかぶる。情けなさを一番上にすることで、他の感情はその下に落とすことで、仮面をかぶれるようにする。誰にも見透かされないように。・・・そんな自分が、情けなくて、許せなかったけど・・・

 そして、死への疾走を止めるために2回、押しつけた。これは、ナイフで腕を切り付けるのと同じ。その痛みで、終わらせる。情けないと、心の中で呟きながら。

 これが、14個の煙草の焼け跡の理由。


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