2004年08月23日(月) 星を飾る青年
 

※8/21からの連載になっています。まずは21日の「メモ書き」からお読みください。

旅にでてちょうど1ヵ月と5日目。
わたしは国境を越え、いまだに西へと向かっていた。

石造りの街並み。先のとがった形ののっぽの木。
車輪のやけに大きな自転車。
ぐんぐんと進んでいくと、へんてこな帽子を被った青年に出会った。

どうへんてこなのかというと
パーティーで被るようなとがった帽子のてっぺんに
くるくると風車のような木製のプロペラが回っているのだ。
わたしはそのへんてこな帽子に釘付けになった。

「やぁ。こんにちは。」
「こんにちは。面白い帽子ね。」

つい思ったことがポロリと出てしまった。
失礼かと思ったが青年はちっとも気にすることなく微笑んだ。

「あぁ、ぼくの目印なんだ。」
「目印。」
「そう。あぁ、もっと話したいけれど僕はこれから仕事なんだ。」
「何をするの?」
「これさ。」

青年はポケットから何かを取り出すと、それをわたしに見せてくれた。
でこぼこした、そこらへんに落ちている石のような物体。

「それをどうするの?」

青年はにっこり笑って空を指差す。
わたしは青年の指の示す先を眺めて。また青年を見つめた。

「空に取り付けるのさ。」

そういって青年は壁にかけてあったはしごに手をかけた。
わたしは青年の帽子しか見てなかったので気づかなかった。
なんて長いはしごだろう。雲を突き抜けて、先は見えない。

「見ていて。きっときれいな一番星を見せてあげるよ。」

そういうと青年は、軽い足取りではしごをあっというまに上っていった。
わたしはあんぐり口を開けて、もう見えなくなってしまった青年を見上げた。

夜になり、静寂と暗闇が世界を包み始めたころ
わたしは窓から夜空を見上げていた。
まだひとつも星は出ていない。
青年は無事たどり着いただろうか。

とそのとき、小さな灯りが夜空に点った。

「あ!」

青年だ!とわたしは思った。
そしてそれが合図だったかのように
次々と夜空に星が生まれ始めた。
またたくまに、夜空は完璧な星空へと生まれ変わった。
わたしは驚きと感動で、大きく息を漏らした。

一番星のすぐ隣で、青年のプロペラが回っているような気がして
わたしは一番星に手を振った。

明日もきっと晴れるだろう。





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