浮気をしました。 どうでもいいひとと。
彼は、優しく許したりなどしなかった。 わたしは初めて彼が怒るところを見た。 罵ることも、手をあげることもなかったけれど。 その目は底冷えのするような冷たさで、そしてとても悲しそうで 肩を震わせて、彼は静かに泣いた。
「いつかこういうことがあるんじゃないかと思っていた」
震える声で。
「それでもきみを愛せるんじゃないかって思ってた」
泣くように。
わたしは、叱られも許しもされなかった。 ただとほうもなく人を傷つけて。 ようやく
このひとにただ愛されたかっただけだってことに気づいた。 それはもう、ずいぶんと遅かったけれど。
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