秋に逝く人 - 2002年12月04日(水) 10月14日に作家の日野啓三さんが亡くなっていた。 ここ数年、日野さんの作品を読んでずいぶんと励まされていたのに、気が向いた時しか新聞を開かない私が訃報を知ったのはだいぶ後になってからだった。 読了した作品については図書室のページに感想を書いているので、ここでは詳細に触れないが、近年読んだ小説の中で日野さんの作品ほど心に深く残ったものはないと思う。 最後に出版された「落葉 神の小さな庭で」という短編集と、「文学界」の12月号で特集されている「追悼 日野啓三」を読み終わったら何か書きたいと思っていたのだ。 そんな折、今朝の新聞でもうひとつの訃報に触れた。 詩人の吉原幸子さんだ。 2002年11月28日歿、享年70歳。 本棚から現代詩文庫を出してきて開いてみた。 高校生の頃に買った詩集のページは少し黄ばんでいて、見覚えのあるページを開くと、時間が逆流するような感じがした。 こんなに清冽な言葉たちから目をそらさずに立ち向かっていた自分の若さを思うと、遥か遠くの青空を眺めているような気分になる。 心に残る文章の書き手の度重なる訃報に、秋から冬に変わるこの季節の寂しさをひとしおに感じずにはいられない。 ...
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