ひとりびっち・R...びーち

 

 

素敵な荷物 - 2002年01月29日(火)

 28日に、児童文学作家のアストリッド・リンドグレーンさんが亡くなった。
 94歳だった。

 「長靴下のピッピ」の作者といえば、ご存知の方も多いと思う。

 他にも、「名探偵カッレくん」シリーズ、「やかまし村」シリーズ、など、たくさんの作品が邦訳されている。

 私がリンドグレーンさんの著書に出会ったのは小学校の図書室だった。
 面白くて、面白くて、片っ端から借りて読んだ記憶がある。
 
 全体としては色褪せてぼんやりしてしまった小学校の時の記憶だが、図書室の棚の色や、並んでいた本の背表紙や、窓から射し込んでいる午後の光などは、かなり鮮明に思い出すことができる。

 馬を持ち上げてしまうほど力持ちのピッピには心から憧れたし、カッレくんが本物の犯罪者と出くわす場面では、どきどきして手に汗を握った。

 リンドグレーンさんの作品には、自由でのびのびした世界がひろがっていて、カッレくんやピッピのいる国の子どもになりたいと思ったものだ。

 もちろん、ナルニア国物語やツバメ号のシリーズを読んでいた時には、その国の子どもになりたいと思っていたから、具体的にスウェーデンやイギリスという国ではなく、漠然と外国に憧れ、夢を見ていたのだろう。

 どことなくもの悲しさの漂う日本の童話や昔話と違って、外国の児童文学の中には夢や冒険がいっぱい詰まっているように思えたのだ。

 小学校の図書室で、海の向こうの香りを胸一杯に吸い込み、遠い国を夢見ていた頃の気持ちは、髪が半分白くなった今でも、ほとんど変わらない。

 夢見がちな子どもは、そのまま夢見がちなお母さんになり、あっという間に夢見がちなお婆さんになるだろう。

 夢見るチカラを詰めこんだリュックは、せちがらい世の中を渡るためには、何の役にも立たない邪魔な荷物かもしれないが、これからピッピと出会う子どもたちに、背中のリュックを指差して、笑顔で目配せできるお婆さんというのも悪くないだろう。

 この素敵な荷物をプレゼントしてくれたリンドグレーンさんに感謝して、心からご冥福をお祈りしたいと思う。


...




My追加

 

 

 

 

INDEX
past  will

 Home