2000年10月02日(月) さらば相棒・その結末

Fくんは、以前の茶髪と違って黒く短くした髪とスーツをきっちり着こなしていた。
どこを見ても明らかに普通のサラリーマンだ。
きゅ「おお〜久し振りだな〜就職したの?」
F「うん、今、健康食品の営業してるんだ」
きゅ「そりゃ良かった。まあ、上がんなよ」
ということでFくんを部屋に上げて、しばし話し込んだ。

Fくんはどうやら付き合ってた女性がいて、相手の両親がFくんの過去を知って交際に反対
しているそうだ。
そこで彼は心を入れ替えて真面目に働こうと決心しているらしい。
決してきゅべも偉そうなことを言えるほど真っ当な生き方をしてたわけではないが
妙に嬉しかった。
予め言っておくが、Fくんは確かに前科持ちだけど悪いやつではない。
とても思いやりがあり家族思いだ。だからこそ悪事を働くのが信じられないのだが、、、、

こんなエピソードを聞いた。
鑑別所に入ってたときに彼のお母さんが面会に来てくれたときに彼の好物のモツ煮を差し入れた
そうだ。
そのときFくんはツッパって「要らねーよ、もう来なくていい」と言って母親を罵倒した
らしいのだが、後でそのモツ煮を食べて母親の思いが伝わったのか、ワンワン号泣したそうだ。
それ以降は一応大人しくしていたみたいだが、この前みたいな事をした件でちょっと意見した。
きゅ「俺も親をないがしろにしてるけど、せっかくそういう気持ちになったんだから
   やっぱりああいうことしちゃダメじゃん」
F「うん、そうだね、、最近はちゃんと働いてるから親も彼女もほっとしてるみたい」
相変らず素直なヤツだ。

せっかく来てくれたんだし、就職祝いってことで彼の売ってる商品を少し買ってあげた。
Fくんはニコニコしながら「ありがとう、、、色々迷惑かけてごめんね、、、」と言って
きゅべのアパートを後にした。
別にきゅべの手柄ではないが、彼が更正したことが妙に嬉しかった。
しかし、この平和な日々もそうは続かなかったのです、、、。

ある日、一本の電話が鳴った。相手はFくんだ。
F「実はさ、、事情があってサラ金から金借りなきゃならなくて、もし借りれないと刑務所に
  入ることになっちゃうんだよ、、、」
きゅ「なに?まさか保証人になれって言うの?」
F「いや、しのちゃん(きゅべの呼び名)の電話番号を俺の勤め先ってことにしてくれればいい」
きゅ「そっか、、、いいよ、でも早く返したほうがいいよ」
なんときゅべは了承してしまった。
せっかく真面目になったのに『刑務所』なんて言葉を聞いて自分もどうかしていたかも知れない。
ここら辺が、きゅべの弱点で、後に別件で大いに人生を狂わせた要因なのだ。
彼が言うには後日サラ金会社から連絡が入るから「はい」と言うだけでいいそうだ。

その話を聞いていたのがこの日記でもお馴染みのA子ちゃんだ。
A子「バカじゃないの?!そんなの引き受けちゃったら自分も片棒担いだことになるんだよ?!」
もっともな意見だ。
A子「私が明日電話で『違います!』って言ってあげる!」

翌日、案の定サラ金会社から何度も電話があったが、その都度A子が電話で「違います!」
と一蹴した。
その後、Fくんからの連絡は一切途絶えた。
きゅべも一度は了承したことでどうも罪悪感が残った。
本当にFは刑務所に入ったのだろうか?彼が自分のことをどこかの空の下で恨んでるのでは?
と思うと、心が痛む。
刑務所に入るってどういうことなんだろう?聞いておけばよかった、、、。
まあ、殺人を犯すようなヤツじゃないし、せいぜい窃盗程度の悪事しかできない男だから
仮に服役したとしてもとっくに出所しているだろう、、、。
今では彼の電話番号を記したものも無いし、きゅべもそれから2回引っ越した。
何年もの間、Fのことなど忘れていたのだが最近妙に気になる


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きゅべれい [MAIL]