under one umbrella

2007年06月13日(水) 変なこじつけで。






その胸に抱かれたら、あたしは気が狂うだろう。
狂って、何も見えなくなるのだろう。
あの温かい手を、いとも簡単に離してしまうのだろう。

テーブルの向こうの寺島を見ながら、そう思った。




抱かれた記憶は遠くて、
あたし達はまだ10代だ。
思い出すだけ馬鹿らしい、とは思うようになった。


思い出しても、胸の痛みはない。






寺島は、他愛ない話をしている。
特に決まっているわけではないけど、
1週間に1度は、必ず会いに来る。






ユミちゃんの話は、出なくなった。
ペアリングも、あたしの前ではしない。

あたしだって、誠さんの話はしないけれど。







会っているメリットは勿論、
意味なんてない。
あたしはそう思う。


体も許さなければ、
現在の恋人の話も許さない、
そんな元恋人に会いにくる意味なんかない。




それでも寺島はやってくる。
まとまった時間がなければ、
犬の散歩の途中に寄って来る。




「こいつがお前に会いたいって」




変なこじつけで。







「マリちゃんてば、俺にツンツンするんだから」





あたしはあなたに、どんな顔をすればいいんだろう?
まだ答えが見つからないの。





「こないださぁ、教え子が面白かったんだよ、…」





あたしの笑顔を探さないで。
そんなあなたを見るのは、辛い。





誠さんなら簡単に叶えられることを、
あなたが出来ないのを見るのが、辛い。






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あたしの視線ばかりが、
あなたの唇を捉えている。





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