悲しくて寂しくて、思わず声が出ていた。 寺島と付き合い始めてもうすぐ4年。 ほとんど初めてと言っても間違いはないと思う。 寺島の前で、声をあげて泣くなんて。
かっこよく言えばわかっていた。 かっこ悪く言えば信じたくなかった。 不安はいつもあたしの心に沈んでいて、 いつもあたしの言葉の裏に潜んでいた。 好きだよ、と口にするたびに、罪悪感が残っていた。 俺も、という返答は、聞いたことがないから。 だから口にしたくないのに、してしまう。 そんな弱い自分が大嫌いで、でも寺島は受け入れてくれていた。
泣き続けるあたしを、寺島は必死で宥めて、 あなたの服が濡れると拒んだら、濡らすためにあるもんだとか言って抱きしめた。 ずっとわかっていた。ずっと不安だった。
やっぱり…あなたの心からあの人は消えていなかった。
「もし今、梅宮さんから告白されたら、
俺はお前を捨ててでも梅宮さんのところに行くと思う。
7年経とうとしてる、今でも」
その台詞につながった会話はもう覚えていない。 あたしはうすうすそんな寺島を知っていて、この台詞も想定内。だった。 だから少しだけの涙は出るけれども、すぐぬぐえばなんてことはない。 ふぅんと微笑んで、何かしらの寺島のフォローを、笑うはずだった。
いつもそうだったんだ。 寺島から悲しい台詞を聞くときは。 必ずあたしは予想していたし、必ず寺島はフォローした。 そうして今までやり過ごしてきた。 あたしは1人になってから受け止めて噛み砕いていた。
どうして、いつもどおりにいられなかったんだろう。 最近、寺島が優しくいてくれたからか。 心からの思いやりを感じさせてくれていたからか。
寺島が何度となくあたしを抱きしめる。 フォローの台詞を雨の如く降らせる。 あたしはその全てが納得できない。
あたしは大丈夫なんだから。 気にしなくていいのに。
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