under one umbrella

2006年01月07日(土) 想定内



悲しくて寂しくて、思わず声が出ていた。
寺島と付き合い始めてもうすぐ4年。
ほとんど初めてと言っても間違いはないと思う。
寺島の前で、声をあげて泣くなんて。


かっこよく言えばわかっていた。
かっこ悪く言えば信じたくなかった。
不安はいつもあたしの心に沈んでいて、
いつもあたしの言葉の裏に潜んでいた。
好きだよ、と口にするたびに、罪悪感が残っていた。
俺も、という返答は、聞いたことがないから。
だから口にしたくないのに、してしまう。
そんな弱い自分が大嫌いで、でも寺島は受け入れてくれていた。



泣き続けるあたしを、寺島は必死で宥めて、
あなたの服が濡れると拒んだら、濡らすためにあるもんだとか言って抱きしめた。
ずっとわかっていた。ずっと不安だった。

やっぱり…あなたの心からあの人は消えていなかった。








「もし今、梅宮さんから告白されたら、

俺はお前を捨ててでも梅宮さんのところに行くと思う。

7年経とうとしてる、今でも」



その台詞につながった会話はもう覚えていない。
あたしはうすうすそんな寺島を知っていて、この台詞も想定内。だった。
だから少しだけの涙は出るけれども、すぐぬぐえばなんてことはない。
ふぅんと微笑んで、何かしらの寺島のフォローを、笑うはずだった。

いつもそうだったんだ。
寺島から悲しい台詞を聞くときは。
必ずあたしは予想していたし、必ず寺島はフォローした。
そうして今までやり過ごしてきた。
あたしは1人になってから受け止めて噛み砕いていた。





どうして、いつもどおりにいられなかったんだろう。
最近、寺島が優しくいてくれたからか。
心からの思いやりを感じさせてくれていたからか。




寺島が何度となくあたしを抱きしめる。
フォローの台詞を雨の如く降らせる。
あたしはその全てが納得できない。



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あたしは大丈夫なんだから。
気にしなくていいのに。



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