「ねぇ陽ちゃん。
あたしあなたのこと、すっぱり諦める。
ないものねだりって言葉がしっくりくるし。
これからも好きだけど、
あなたを手に入れようって思うことは。
あなたの1番になろうってすることは。
あなたに愛されようって思うのは。やめる。
それが無理だって、今までもずっと言われてたのに、
何とかなるかも、 だってこんなに好きなんだし、 未来なんてわかんないしって。
足掻いて、しがみついてただけだから」
そう言おうとかけた電話。 寺島の話を聞いてたら、言う気がなくなってきた。
寺島のテニスの話は、 以前より大分理解しやすくなっている。 それは話を聞き続けたことと、 あたしがテニスを始めたことがあるんだろう。 もっと上達したらもっとわかるよ、と寺島は言った。
他の誰のどんな話より、安心する。 どうしてだろう。
聞きながら。 わけのわかんない宣言なんてやめようと思った。 こんなこと。 わざわざ言わなきゃいけないことでもない。
心が敏感になってるのか、 寺島の毒舌に鋭く突かれる。 いつも以上に痛くて、 あぁ、今は病気だなぁと思う。
でも笑い合えたから。 寺島の笑い声を確認できたから。 そのうち癒えるでしょう。 それだけで。
そうしてひとまず。 傘は寺島にあげて。 自分の傘を取りに行こうと思います。
相合傘できるほど、あたし細くないしね。
傘のある場所までは、雨だけど。 濡れても歩き続ければ、タオルと傘のある場所まで、 いつか辿り着けるでしょう。 どんな柄の傘か、わかりませんが。
辿り着いたら、戻ってきます。 ここはあたしの、再出発の場所。
ここは、あたしの特別な場所だから。 その場限りの感情を流す場所には出来ません。 だから休止。
大事に残したい想いが芽生えるまで。
では皆様。 ご愛読、本当にありがとうございました。 必ず、必ず戻ってきますから。 そのときまた。よろしくお願いします。
まりあ
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