どんなに涙が止まらなくても、 どんなに胸の奥が痛んでも。 願いは決して変わらないし、 信じることもやめたくない。
寺島の笑顔がどれだけ大事か、 信じられないことにどれだけ傷つくか、 それを忘れたくなくて、 あたしは笑う。
寺島の体温とか、腕の力とか、 唇の感触とか、火傷の痕とか。 究極的にはそんなものも要らないんだ。 あっても笑顔がない、 その辛さが1番心に堪えるから。 懐かしい、辛さだけれど。
昨日の電話で、寺島は、 「桃子ちゃんが好きって宣言する。 まりあをこれ以上悲しませないためにも」 って言った。 嬉しかった。
だってね。 あたしはよく、偉そうに寺島への気持ちを語るけど。 欲しいものを我慢せずに言ったら、 昔のように愛して欲しいんだ。 昔のように想って、 あたしだけを見てて欲しい。
とても自己中で、 身分不相応で、未練がましくて、 カッコ悪すぎて、バカバカしい願い。 寺島を信じる気持ちに、 それが関係ないとは言えなくて、 苦しかったりするんだ。自爆。
そしてそれがもうありえないことも、 ずっと前からわかってて、 この関係がいつか必ず終わることも、 寺島が新しい人を見つけていくことも、 あたしの頭の中にはちゃんと描かれてる。
それでも、寺島が他の人との話をすると、 あたしの眼には涙が溢れる。 どうしようもないせつなさに包まれる。 そんなあたしの悲しみを、陽ちゃんが汲み取ってくれる。 解放してくれようとする。 だから、嬉しかった。
けれど、今度は寺島のわがまま。
「じゃぁ、抱き合うのはもうなしね」
って言ったら、
「えっ…………イヤだー」
なんて子どもみたいに。
「ダメ。どっちか」
「まりあじゃなきゃイヤ」
「矛盾してない?」
「…………」
と、こんな会話が朝の4時まで続いていた。 なんだ、よく幸子に言われていたけど、 初めて実感した気がする。 うちらって馬鹿だ。
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