まりあ、といつも寺島はあたしを呼ぶけれど、 まりちゃん、と不意に呼ばれるときがある。 小さな一瞬、温かくなる。
確か会うのは約1週間ぶりなのだけれど、 そんなに離れていない気がするのはどうしてだろう。 今日が終わればまたバイトがつまっているのに、 別れるのが寂しくないのはどうしてだろう。
それでも、目の前にある寺島の肌に触れたかったし、 体温を感じたかった。 あたしが流したT.M.R.のライブビデオに苦笑しながらも、 肩を抱いてくれた。 ライブに泣くふりをして泣いていたなんて、 きっと気づいていないに違いない。
竜崎君になら抱かれてもいいかも、 という冗談が通じなかったのは本当だったんだろうか。 冗談が通じないふり、という冗談だったんだろうか、 本当のところは、 寺島がすねた(ふりの?)まま眠ってしまったのでわからない。 起きた寺島は上機嫌でくっついてきたから、 あたしはホッとした。
すぅっと、体に力が入ってきた気がする。 ありがとう。 あたしはどうやってお返ししたらいいのかな。 もらうものが大きすぎて、わからないよ。
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