まだほんのり蒼い空に浮かぶのは、白い月。
「ねぇ陽ちゃん、ほら、
夕方なのに月が出てる」
古本屋さんからの帰り、 あたしは指を指してみせる。
「あぁ、俺が呼んだからな」
「マジで?!すごくない?!
星と交信してるよ?!」
笑いながらあたしがツッコんで、
寺島も、
「太陽系崩せちゃうナァ。
危ない危ない」
なんて言って笑う。
こんなありえない冗談が、 いつものことのあたし達は、 藤原や幸子からよく呆れられる。
でもあたしは、 とても慈しんで大事にしてるものだったりするのよ。 笑えるのが1番だから。
もし寺島を失っても。 あんなに楽しく笑えたじゃないかと思えることは、 重要だと思うの。
昨日寺島は、何も言わずに手を広げた。 それが“おいで”というジェスチャーであることに気づくのに、 2秒ほどかかった。
口で言わなきゃわかんなくなったか、と嘆いてみせる寺島に、 だって久しぶりだったから忘れてた、と言ってやった。
でもありがと。 嬉しかった。
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