寺島がいないと寂しいから、 一緒にいたいわけじゃないんだよ。
寺島がいなくても、 寺島以上に、あたしを愛してくれる人がいること、 ちゃんと、知ってるから。
支えてくれる、友達。 笑わせてくれる、友達。 傍にいてくれる、友達。 元気をくれる、友達。 言葉をくれる、友達。 聞いてくれる、友達。 皆、ちゃんといてくれて、 あたしは、すっかり満たされている。
だから、これ以上何かを求めるのは、 贅沢なのだ。
絶対におかしい。 あたしを彼女にも出来ないくせに、 あたしの何も知らないくせに、 あたしを抱き締める寺島の胸が、心地良いなんて。
何かがおかしい。 あたしは、あたしの話を聞いてくれて、 あたしを知ってくれる人の傍が安心するのに、 多分あたしの嫌いな食べ物も知らない寺島を、選ぶなんて。
「ねぇ陽ちゃんっ…
あたしは、全身全霊で、
あなたを愛してるんだからね…」
「ごめんね…
陽ちゃんを癒せなくて。
支えられなくて…
ごめんなさい…」
携帯の向こうで、寺島は、 あたしの涙声を受け止めてくれて。
何度も、
「うん」
と言ってくれた。
ありがとう。
もうそんな押し付けがましい言葉は、嫌だな。
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