電車の中で、躊躇うことなく泣いた。 終電だったから、人はあまりいなかった。 本を読み進めずに、何度も窓を見て、 風景を見るふりをして自分の顔を見ていた。
あたし達の信頼関係は、深いようで、 実は脆いのだと思う。 寺島があたしに寄せる信頼の要素には、 あたしが寺島だけを想っていることもきっと入っている。 だからもしあたしが新しい人を見つけたら、 もう心を開いてはくれないんじゃないかな。
それは少し嫌で、 そうなっても、仲良くやってられる位置にいたいのだけど。
少し思い返したら涙が出るような、 深い傷もまだ残っていて。 2月のメールも、4月の電話も、9月の告白も。 終わったことなのに、じくじくと涙腺が音を立てる。
けれど、寺島が昨日、4時間過ごした後にくれた、 「お世辞じゃなくて楽しかったよ」 って一言で、 はちきれそうになるくらい心が満たされる。 もうそれ以上のセリフは、要らない。 あなたが満たされたなら、あたしは何も言うことがない。 そんな、馬鹿。
ねぇ陽ちゃん。 彼女が出来る前に、もっとたくさんのあなたを見せて。 もっとたくさん、テニスの話をあたしに聞かせて。 あたしの中のあなたが、ずっと鮮やかであるように。
もっとたくさん、あなたを残していって。 あたしが笑えるように。
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