5年ぶり、か。
5年前に東京へ行った小田が、また今年もやってきた。 登録してない番号からかかってきて、 何度もかかってくるから、恐る恐るかけ直すと、 懐かしい声がした。 メールも何も、してなかったから。
それから2日後の今日、やっと会える時間が出来た。 5年ぶりの小田は、ちょっと丸くなって、でも逞しかった。
朝早くの商店街のベンチだった。 荷物番にとあたしを残して朝食を買いに行って、 帰って来た小田が持っていた袋の中には、 ジュースが2つ。 既にコーヒーの缶を持っていたあたしは笑って、 小田も笑いながら文句を言った。
そんなさりげない優しさは、中学の頃と変わらない。 そこが、好きだった。
ジュースをちょっとずつ飲みながら、 身辺の話や、同級生の噂話や、 中学の先生の話をした。 緊張していたのか、何となくまともに小田を見れなくて。 小田は何度も、あたしを見て話してくれたのに。 少し、後悔。
小田は今日帰る予定で、 一緒にいれたのは45分くらいだった。 曖昧に来年の約束をして、バス停でさよならをした。
1人で歩いて帰りながら、ジュースのパックを見つめても、 そこには懐かしさしかなくて。 5年経ったのだと思った。
いつの間に、あなたへの想いが消えたんだろう。 あんなにあんなに、好きだったのに。 あなたが旅立つときは、泣いたのに。 第2ボタンは、宝物だったのに。
じゃあいつか、 今寺島を愛している気持ちも消えるのかな。 懐かしさに涙することがあるのかな。
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