やってきた寺島は、妙にご機嫌だった。
その日は教授のおごりでご飯を食べてきたとかで、 きっと楽しかったんだろうと思う。
竜崎君のことを気にしていたのか、よくわからないけど、 いつになくキスが多かった。 頬にもしてた。 笑いながらしてくれたから、嬉しかった。
寝っ転がって、しゃべっていた。 寺島の携帯のデータを見ながら。 その中に、 宇多田ヒカルの「誰かの願いが叶う頃」があって。 寺島が、ああこれこれ、と話し始めた。
あの人の、着メロだって。
だからあの人からメールが来るたびに、余計切なくなって、 「そうなんだよな、皆の願いは同時には叶わないんだよなって、思うんだ」
最近。 感情をそのまま出すことに、慣れてきた。 不快とか。
「あ、そう」 不機嫌な顔で起き上がると、 寺島がひっぱった。
「怒るなよ」 「怒ってない」 「悲しむな」 それは無理。
キスが繰り返される。 でも心だけ泣きっぱなし。
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