under one umbrella

2003年12月04日(木) BGMは『月ひとつ』bySeeSawで。

「…おい?」
「…ん?」
泣いていると思ったのか、市丸が声をかけてきた。
本当だったけれど。

「うつむくなよ。月が見えないだろ」
それはうつむくから見えないのではなくて、
雲が隠しているからだった。
「お前が落ち込んでるから、隠れてんだよ」
「…ホントかなぁ」
「泣いてちゃ新しい恋出来ないだろ」
「…ホントだ」
その後あたしはずっと。
空を見上げながら、市丸の話を聞いていた。


「あの人のこと、どうでもいいって、言ってたよ。
今はやっぱ受験、忙しいって」
「…そうだろうね」
寺島と会う度、それは感じていた。
別れた原因はやっぱり、受験であること。
あの人の存在というのは、実はそれほどまでに大きくないこと。
寺島自身から、聞いたこともあったし。


「宮島はずっと、お前と寺島は戻るって言ってたよ」
「あー(笑)やっぱり?」
「でも竜崎も言ってた。
あの二人は、戻りそうだって」
「え…」
それは少し意外だった。
竜崎君は頭がいい人。
成績がいいというだけじゃなくて、何だかこう、
人間をちゃんと見て、冷静に判断する人だから。
そして寺島と同じ学校で、一番近いところで寺島を見ているはずだから。


宮島と寺島で揺れていたことを、市丸に話した。
結論は、寺島であることも。
「…恥ずかしい話だけどね」
「じゃ、お前…まだ寺島のこと好きなのか?」
「…うん」
「戻りたいか?」
「…うん。戻りたい」
「…それなら戻れるだろ。俺も、宮島達と同じこと思うもん。
あいつは何だかんだで、お前に戻ってくる気がするよ」
思わず、市丸の方を見た。
「ありがと」
やっと笑えた。
宮島のときと同じ。
そんな確信がある言葉じゃないって、わかってるけど。
「ほら」
市丸に促されて見上げた空に。
雲ひとつなく光る、月がかかっていた。
「お前が笑って、元気になったからだよ」
「…落ち込んでたから、隠れてたの?」
「そう」
…ありがとう、市丸。
かっこいいよ。
早く彼女出来たらいいのにね。


***

期末テストだったり、原因不明の体調不良だったり。
散々な毎日ですが。
相も変わらず、寺島君がビタミン剤です。
進歩してないよね、一年前から。



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