寺島と宮島は正反対だった。 寺島は自信家で、宮島は謙虚そのもの。 寺島は親のために早く帰って、宮島は自分のために早く帰る。 寺島は好きな人にだけ優しくて、宮島は大抵の人に優しい。 そんな宮島に触れるたび、宮島に惹かれていく感覚を味わっていた。 だけど何故宮島に惹かれるかっていうと。 単に、寺島と反対だから目新しいだけで。 寺島がいなければ、ただの「いい人」なんだと思う。 寺島があたしのなかにいるから、宮島が引き立つのだということ…。 あたしは、否定できない。
あのカラオケ以来離れない『タッチ』のメロディーの「2人」は、 いつのまにやら、寺島になっていた。 カラオケに行って、久しぶりに誰かにときめいたから、 寺島にさよならを言う決心が出来たのに。 なんだか皮肉。 いつもそう。
あたしの携帯の、メール接続画面には、 『優しくなくても、あなたがいい』 とセリフの入ったチューリップの画像が使ってある。 深い意味なんてなかったのに、胸にズキリときた。 最後のやりとりを思い出す。 宮島の言葉と重なって、ひどくあたしの頭に残る。
ねぇ。 気休めなんだと泣くよりかは、 気休めだけどと笑っていてもいいでしょう? あたしと別れた後も、あたしが落ち込んでいたら、 「笑ってよ」 と言ってくれたでしょう? 落ち込んだ原因は他でもなくあなただったけど、 あなたがあたしの笑顔を望んでくれたことに変わりはなく。 嬉しかったから。笑えたよ。
あたしはもう、あなたを愛していないけど。 まだ、恋はしてるんだと思う。 懲りもせずに。
|