under one umbrella

2003年09月10日(水) でも笑っていた。

先週寺島が来たとき。本を貸していった。
市丸にそう言ったら。
「また会う口実に決まってんだろ?お前のこと好きなんだよ!」
あたしはその本の内容を話したくて、貸していったことを話したんだけれど。
ちょっとびっくりして。
でも正直嬉しくて。
「え…。そう、思う?」
なんて馬鹿みたいに聞き返してしまった。

そういえば来たときに、何の話題だったか忘れたけれど、
「今度からそうしようかな」
って寺島が言って、あたしはびっくりして、
「また来るの?!」
って聞き返した。
あたしのなかでは、いつが最後でもおかしくないようなものだと思っていて。
そもそも次の保障なんて、寺島に出来るはずがない。
「だってほら、本返してもらわないとね」
してやったりの笑顔で返される。
「好きな人いるくせに、好きでもない女と会って、空しくないの?」
悔し紛れに、でもずっと頭にあったセリフを吐いた。
寺島は何も言わずに、ついと前を向いた。
でも笑っていた。

部屋にいるとき、うっかりして涙がこぼれて。
会話が途切れてしまって。
寺島が強くあたしを抱きしめて。
驚いたあたしが離れたら、
「女に泣かれて、放っておける?」
「…そんなに優しくしたら、期待するよ?」
あたしの意地悪なセリフに、苦笑するかと思ったのに。
あなたはあたしを見つめたっきり。なんにも言わなかった。

…どうすればよかったんだろう。
今あたしに求められていることは。
一体何なんだろう。



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