先週寺島が来たとき。本を貸していった。 市丸にそう言ったら。 「また会う口実に決まってんだろ?お前のこと好きなんだよ!」 あたしはその本の内容を話したくて、貸していったことを話したんだけれど。 ちょっとびっくりして。 でも正直嬉しくて。 「え…。そう、思う?」 なんて馬鹿みたいに聞き返してしまった。
そういえば来たときに、何の話題だったか忘れたけれど、 「今度からそうしようかな」 って寺島が言って、あたしはびっくりして、 「また来るの?!」 って聞き返した。 あたしのなかでは、いつが最後でもおかしくないようなものだと思っていて。 そもそも次の保障なんて、寺島に出来るはずがない。 「だってほら、本返してもらわないとね」 してやったりの笑顔で返される。 「好きな人いるくせに、好きでもない女と会って、空しくないの?」 悔し紛れに、でもずっと頭にあったセリフを吐いた。 寺島は何も言わずに、ついと前を向いた。 でも笑っていた。
部屋にいるとき、うっかりして涙がこぼれて。 会話が途切れてしまって。 寺島が強くあたしを抱きしめて。 驚いたあたしが離れたら、 「女に泣かれて、放っておける?」 「…そんなに優しくしたら、期待するよ?」 あたしの意地悪なセリフに、苦笑するかと思ったのに。 あなたはあたしを見つめたっきり。なんにも言わなかった。
…どうすればよかったんだろう。 今あたしに求められていることは。 一体何なんだろう。
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