under one umbrella

2003年09月07日(日) ていうかあたしは。

来ないと思っていた。
来てもきっとまともに相手できないと思っていた。
泣いてしまって、困らせるんじゃないかと思っていた。

だけど現実には。
いつもどおりな自分がいる。
いつもどおりの寺島と、笑い合う。
何だか不思議で。でも楽で。
心地良かった。
こんな時間って。久しぶりじゃないかな。
ていうかあたしは。
こんな時間が欲しくて付き合っていたんじゃなかったのかな。


甘えるような寺島に恨負けして。
寺島が望むだけくっついていた。
体が離れているときは、手をつないでいた。
ちょっと近づけたら、寺島が指をからめるから。
ほどくことなんて、出来なくて。

頬へのキスは、ずっと避け続けた。
「恋人にしかされない主義なの」
でも全てをかわすなんて出来なかった。
だから仕返しのつもりでしてやったら、
「控え目だね」
「…。嫌がるかなと思って」
「何でだよ」
こっちが聞きたいよ。
あたし達、ちゃんと別れたのに。
今度はきれいに別れられたと思ったのに。
どうしてまた、あなたの隣にいるんだろう。

「好きな女が出来ても。また純子の傍にいるんだな」
「情けない人ね」
「否定はしないよ」
喜んでいいのか何なのか、ちょっとわからずにごまかした。
どちらを選ぶのよ、と聞けばいい場面のような気もするけど。
選ばれなかったら悲しいから、聞かなかったんだと思う。

寺島がふっと笑うのを感じた。
理由を聞いたら、
「純子の傍だからか、今俺無防備だなと思って」
前に…寺島は自己分析で、警戒心が強いことを言っていた。
気にしていたようだったから、その言葉は嬉しかった。
だけど…。
「陽ちゃんの一番近くにいるのはその人よ。
近くにいる人には勝てない」
「そうかな。そりゃ距離的には近いけど…嫌われてるみたいだし」
「陽ちゃんが体育祭サボるからでしょ」
「…」
何だか気まずい気がして、背を向けた。
そのまま学校の男子の話をしてるうちに、髪の毛を触る手に気づいて、振り向いた。
その勢いで腕の中にいれられ、また指がからんだ。




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