前々日からの続きです。 それと今日は…性的な表現が含まれます。
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「こっち来て」 と言われて、自転車の向こう側へ行った後。 寺島の手は、私の腰か胸にあった。 おでこをくっつけられて。何回か頬にキスをされた。 我慢できずに声を出してしまう度、どんどん向こうのペースになってゆく。 「恋人じゃなきゃ、ホントはこんな声聞けないんだよ? 贅沢」 そう言うと、寺島は音を立てて頬にキスをした。 不思議そうに見ると、 「恋人じゃなきゃ、こんなキスもらえないでしょ」 「あら…あえぎ声なんか好きじゃなくても出るわ。 キスは好きじゃなきゃ出来ないと思うけど」 なんとかペースを取り戻す。 そんなキスは苦痛でしかなかった。 私は、恋人にしかキスされたくない。 だってこの人。 私じゃない他の人を好きなのに。 そう思うと少しだけ、涙が浮かんだ。
接近したままの真面目な話。 話が進むにつれ、寺島の手はおとなしくなっていった。 「強くなったな」 「陽ちゃんを愛して強くなったの」 私は少しだけ、寺島を抱く手に力をこめた。
不意に、寺島が私の額にキスをした。 「えっ?」 「強い純子に、尊敬のキスだよ」 「…」 これだけ。 私が堂々ともらえるものは、このキスだけ。 私がときめくのも、ドキドキするのも、 心底嬉しいのも、このキスだけ。 ドキドキする度に。 私はまだ、寺島に恋しているのかなと思う。
私を抱き締めたまま、 「おやすみ」 と寺島が言い、時間が来たのを知って、私は体を離した。 寺島が、つないでいた私の手を離すのに間があったなんて、 下手には信じたくない。 「強くなったでしょう」 髪を上げながら私は言った。 「ああ…」 「ふふふ」 「…俺が弱くなったのかも知れない」 「えっ」 「…」 自転車をこいで行く寺島に、大急ぎでおやすみと叫んだ。 複雑な心境ではあったけれど。 哀しくは…なかった。
話題的には、まだ続きます。
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