under one umbrella

2003年08月13日(水) 絶妙なタイミングと言葉と笑顔


あれは何の話題からそうなったのか、よく覚えていない。
2人で、ベッドに寝転んで話していたときだった。
遊びで付き合うとかなんとか。
それを受けて、あたしが冗談で、
「あたしも遊ばれてるの?じゃ、別れよっか」
と言い、身を起こそうとした。
その瞬間、寺島に腕を掴まれ、抱き寄せられた。
「そんなことあるわけないだろ」
寺島の声が聞こえたような気がした。
実際は、強く抱き締めたまま無言だったのだけど。
寺島の腕のなかで、ふっと、涙が出てきた。
そんな過去話。


あたしが寺島から離れようとすると、いつも寺島は引き止めた。
友達だったときもそうだった。
自分が離れたいときはどんどんいってしまうくせに、あたしのときは、
絶妙なタイミングと言葉と笑顔で止めてしまう。
止まってしまうあたしもあたしだけれど、
心底離れたいわけじゃなくて、寺島のためを思って離れようとするのだから、
引き止められたら嬉しいし、止まらないわけにはいかなくなるのだった。


「どうして引き止めたの?あなたは別れたかったのに」
あたしの質問に、寺島は、
「わからない」
と答えた。
それが本音だと、あたしは今でも信じている。
いろいろありすぎて。
荷物が重くて。
自分を見つめる余裕さえ、彼にはないのだと思う。
だからもう何も聞かないことにした。
全て後回し。
大丈夫。
それぐらいの時間なら、待っていられるよ。


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