「あたし、カラオケには行かないから。宮島から、全部聞いたから」
「あ、そう…」
少し薄暗くなった、駅からの帰り道。 寺島と、市丸(前名:ポール)と、3人で帰りながらだった。 気まずいながらも何とか市丸が場を持たせていた。 あたしはほとんど、しゃべらなかった。
分かれ道まできた。 あたし達はその分かれ道で、きれいに3方向に分かれることになる。 だからいつもそこでたまって、話していた。 寺島と付き合うことになったのもそこだった。 いつもいつも…この道…。
帰ろうとする寺島を無理に引き止めて、話そうとした。 「ねぇ、別れたいんならあたしに言って。どうして宮島や幸子に話せるの? 何で計画なんて立ててるの?ずるいよ…」
「…何にも…話すことはない」
「何それ…」
「…もう時間ないから…帰っていいか?」
こんな話をしてるのに帰っていいか?ふざけないで? あたしの質問に答えて? その前にあたしの顔を見て話してよ寺島。 寺島? ホントにそこにいるの? いるなら何か言ってよ。 本当は、全てあなたの口から聞きたかったの。 ちゃんと話したかったの。 寺島。 あたしのこと嫌いになった?ねぇ。 ねぇ、ねぇ寺島!!!!!
パシン。
後ろを向いて、そのまま走った。 走って走って…とにかく走って…。 手がジンジンしていて。心なしか右頬が痛くて。 その痛みに、涙が零れた。 「痛いよぉ…」 そう言って泣きながら帰ってきたあたしに、家族は呆然とするばかりだった。
どんなに謝っても、足りないね。
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