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新しく買ったショートブーツを下ろした。とたんに両くるぶしが靴擦れになった。 午前中フランス語教室。この間同い年と発覚したマダムの好奇心を、ふとしたことで刺激してしまい、休み時間のたびに私的なことを質問される。どうも彼女は自身の路線と近く、かつ自分が思っている路線から外れている人には異常に興味を示すらしい。ただ、それを聞いて「へぇ、こんな人もいるんだ」と楽しむというよりは、自分の常識が覆されるような気がするのか、納得できるまで根掘り葉掘り聞くというパターンである。今まで何人か質問攻めにあっているのだが、今度は私がターゲットだった。クラスにいる「あたしは、あたしは」という自己アピールマダムとセットになってくれれば平和になると思うのだが、そうもいかないらしい。 クラスが終わってから一目散に千葉へ。ここ2週間で千葉方面に行くのは3度目である。今日は千葉市美術館で天津市芸術博物館展を見る。千葉駅に降り立つと、妙に旅情を感じるのはなぜ。美術館までは徒歩で15分ぐらい。駅前ロータリーからバスでもいけるらしいので、ちょっと案内板を見てみるがよくわからない。結局停車中のバスに首を突っ込んで聞き、「○○じ」で降りれば行きますよ、と言われる。バスは東京と違って後ろ乗りの前降り後払い。それだけで旅情が増す。「○○じ」が聞き取れなかったので、乗り込んでから路線図を見るがよくわからない。きょろきょろしながら座ると、隣のおばさんが「美術館は2つめですよ」と教えてくれる。「『○○じ』っていわれたんですけど」というと「なんだったかしらねぇ…」としばらく考えて「ああーそうだ、『広小路』だ!」と思い出してくれた。そうか「広小路」か、「○○寺」じゃないのか。バスは近場だと100円らしい。安いので感心しているとまたもおばさんが「でも現金だけですよ」と教えてくれた。なるほど100円なら気軽に乗れるし、現金なら面倒な設定も不要だし、いい方法である。バスは無事に広小路に着き、この辺りかと見回すと後ろの方の席のおばさんが「あっちよ、あっち」と指差して教えてくれ、隣の席のおばさんが「ここで降りて右」と教えてくれて、最後にバスの運転手が「ここ渡って右側です」と教えてくれた。ええ人や>千葉市民。 中に入るとまず、翡翠の彫り物など。ついで陶器。陶器は英語でchinaというぐらいである。日本の焼き物のような「侘びさび」よりは、左右対称あるいは円形に整っている物が多い気がする。大人で一抱えもあるような大きい花瓶もある。金属製にみえるように彩色を施した一輪挿しとか、青銅器を模した翡翠の彫り物とか「こんなこともできちゃうんだもんね〜」というような技巧を見せ付けるような作品もあり、中国の不思議な価値観が浮かび上がってくる。少なくとも「羽織の裏に凝る」というようなメンタリティではないらしい。 次に文房具(主に書道具)。目にも鮮やかな色墨セット、さまざまな彫り物を施した硯、印、軸が陶器製の装飾品らしい大筆などが並び、写実的な泥人形を見て、書画類。先日雅印を物色したせいか、作品そのものよりもどうも雅印に目が行く。皇帝が画を見ると、「見たよ〜ん」という印を作品中に押してよかったそうで、画面のどまんなかにべったりと皇帝印を押して作品もある。せっかく白い空間に夕日のように印が押されているのだが、印自体も古いので不思議と作品を損なっている雰囲気はしない。が、作者の気持ちはどうなのよ。掛け軸は、日本のように床の間にかけるという制約がなく、壁にいきなりかけるのでやたら大きく、幅も長さも自由なようである。そして正確に数えたわけではないが細かく写実的な人物が2000人ぐらいは描かれているという巻物や、広げると何十メートルにもなるという巻物などもあり、とにかくスケールの違いに驚く。 そのまま書のコーナーに移ると、これまた大きな作品が並ぶ。ソファと図録画があったので腰掛けてゆっくり鑑賞する。中国の書なので当然漢詩がならんでいるのだが、ずいぶんとバラエティに富むものである。端正なものあり、奔放なものあり、一つ一つの字はばらばらに見えるが全体がなんともいえない調和をかもし出している。ここまで見たところで集中力がとぎれるが、もう一部屋、十二支などの絵を見て終わり。 フロアを移って地元の人・もの・自然をテーマした企画展を見る。天津市と千葉市は友好都市だそうだが、天津はラストエンペラー溥儀、稲毛は皇弟溥傑ゆかりの土地でもあるらしい。こんどテレビで放映されるドラマのポスターなども貼ってあった。 美術館を出るとすでに暗い。バスをしばらく待ってみるが当分こなさそうなので、靴擦れの足を引きずってとぼとぼ歩き始める。バス停一つ分歩いたところで駅前の通りでバスが来たので乗る。この一つ分が意外と長い。駅の通路には地方の物産を売る店がずらりと並んでいる。茨城の露天で乾燥納豆を買い、地元の新豆落花生を買って帰る。夫は今日は横浜に行っていて中華街で肉まんを買って帰ってきた。なんだか近県のお土産が並ぶ夜。
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