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2003年09月03日(水) 若さゆえの残酷

集中講義2日目。
受講生は現役大学生・社会人・主婦など多様な年代、立場の人々。演習となるとやはり現役学生の方が要領も飲み込みも早い。年齢が上の人はちょっとした用語の意味に躓きうーむとうなってしまう。
授業後クラスに残って質問してきた、年は私よりちょっと上ぐらいの絵に描いたような「やさしくてがんばり屋のお母さん」という雰囲気の女性。新しい概念をつかみかねている。一生懸命理解しようとするのだが、すでに頭の中がパニックになっていて受け付けない状態である。年齢を重ねると、特に論理的な記号とか用語とか入っていきにくいのには、私も実感としてある。30を超えて理系の院に進んだとき、新しく習うことでも年下の同級生達がするすると理解していくのについていけず、悲しい思いをした。10代から20代前半ぐらいまでに数学的訓練をつんでいないので、一生懸命やってもやはり理解が遅いのである。件の彼女は他の人はどんどん理解してるんでしょうね?と聞いてくる。確かに簡単な事なのである。ただ彼女には消化するまで時間がかかるだけなのだ。人によります、と答え、さらにこういうときはいったん帰ってご飯でも食べて血糖値をあげて、そのあとお茶碗を洗ったり、ひょっとトイレから出てきたときにわかったりするものです。と言った。
そうこうしているうちに、現役学生らしき女の子が部屋に入ってきた。彼女の通学仲間らしい。概念をつかみかねているという彼女に、「こんなの簡単ですよ、こうこうこういうふうに考えればいいんですよ」とどんどん新しいバリエーションを繰り広げてくる。今まで受けていたのとまったく違う説明を受けて、ますます混乱する彼女。おぉ、おぉ、若さゆえの残酷だよなぁ、と思う。若い女の子が言っていることは確かに間違ってはおらず、自分が直感的にそのように理解したままを「簡単だから」とよかれと思って説明しているのだろうが、今パニックに陥っている彼女にとっては「これはそんな簡単なことなの?そんな簡単なこともわからない私って…」とますます追い討ちをかけるだけだろうにと思う。
いったん私が先に教室から出て忘れ物に気づいて戻ったら、彼女が涙ぐんでいた。「大丈夫ですよ」と根拠なく声をかける私。やっぱり私の説明が悪いんだろうなぁ。


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