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今日用先で駅前のバスターミナルからバスに乗った。先頭に並んでいたのは二人ほどで、その脇のガードレールにもたれている老婦人が数人。老婦人たちは並んでいるのかよくわからない。このバス停には同じ行き先ながら違う経由のバスも来るので、それを待っているのかもしれないと思いながらなんとなく距離を開けて乗り場で待つことにした。ほどなくバスが来たのでバスに乗るべく近づいていくと、脇にいた老婦人たちがいっせいにバスに群がり、その中の一人が身体全体で私を押しのけながら「並んでんのよっ!!」といった。そして他の老婦人に聞こえよがしに「ねえ」と同意を求める。 一瞬あっけにとられたが、思わず「突き飛ばすことないじゃないですか!ここに並んでなかったんだし、ずっと間が空いてたでしょ!?」と、私を押しのけた老婦人に向かって抗議の声をあげた。同意を求められたほうの老婦人は、「まあまあ」というような笑顔を私に向けたが、私を押しのけた老婦人は突然聞こえない人になったらしく、そのまま逃げるようにバスに乗り込んでいく(逃げるように乗り込んだところで、私もそのバスに乗るのだが)。そのままおくの座席に座ると、そのまま石のように動かなくなった。だんまりを決め込むらしい。あまりに腹が立ったので私も彼女のすぐそばに座り、呪詛を行った、というのは嘘だが、体中から怒りのオーラを発して彼女に負のエネルギーをがんがん送りつける。さっき私を押しのけて「並んでんのよっ!!」といった勢いはどこへ行ったのか、たまにこちらの様子をちらりと伺うほかは、ひたすら石のように無表情に座っている。長年にわたる日ごろの行いや心がけが、そのまま顔つきになって顕れているような、「柔和」とか「奥ゆかしさ」とは程遠い強欲な顔だった。さびしい人である。 帰りのバスに乗ってきたのは、酔っ払い。バスに乗る前に女子高生にちょっかいを出し、バスに乗ってからも料金を払うのに大騒ぎをし、座席について一人大笑いをしたり、ことさら大きな声で咳払いをしたりしている。かまってほしいんだろうなー、と思っていると、隣の席の若い女性に時刻を聞き始めた。それをとっかかりに会話を始めようという魂胆だったらしく、いきなり「おれ、前科6犯に見える?」とかなんとか言い出した。「2週間前に娑婆に出てきたばっかりだ」とか「執行猶予中だったからちょっとしたことですぐ懲役になっちゃって」とか言っている。どこまで本当なんだか、話しかけられた女性はとりあえず相槌を打っているが、いい迷惑である。こちらもとてもさびしい人なのだろう、と思いながらバスを降りた。と思ったら背後で運転手さん、待ってくれよ〜っと声がして、その酔っ払いも続けて降りてきた。ちょっとびびった。
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