WELLA
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2003年02月14日(金) 一寸先は闇

初期値の大きな違いがその後の振る舞いに大きな変化を与えることを、初期値敏感性といって、カオスの特徴をしめす説明などでよく使われる。遠く離れた北京で一匹の蝶がはばたいたことがやがてニューヨークの嵐となる、というような話である。
さて、話はさかのぼって数日前である。とある女性が金沢に旅行したと考えていただきたい。彼女は金沢で有名な水飴の店に立ち寄り、キャンディ状になった飴をお土産に買い求めた。帰京した彼女は数日後にそのお土産を友人に渡した。そして今日、お土産をもらった女性は、もらった飴をもって会社に出勤し、お昼は知り合いと外で食べることになっていたので、おすそ分けにと思って飴を2つバッグに入れて職場を出た。
食事を済ませて外に出たとき、彼女は飴を忍ばせていたことを思い出し、「はい、これ金沢の飴だって。れいこなさんあっちに住んでたから懐かしいかと思って。」といって飴を渡した。それを受け取ったわたしは「ありがとう、俵屋の飴ね」といってコートのポケットに入れておしゃべりに興じながら少し町をあるいて職場に戻った。
私はその日、午前中は調べ物に時間を費やしていたのだが、その途中でとあるDBサービスの会員になることを思いたち、オンラインで会員登録をした。本当は昼食の時に郵便局に料金を払い込みにいく予定だったが、うっかり忘れて午後に回すことになっていた。午後は仕事の傍ら、自分のノートパソコンをWin98から2000へアップグレードしていたのだが、インストール中の待ち時間が40分ぐらいあったので、その間に郵便局に行くことにした。
コートを着て外に出ると意外と寒く、思わずポケットの中に手を入れるとそこに飴が入っているのに気づいた。そういえばさっきもらった飴だと思って口の中に放り込む。上品な甘さである。中にゴマが入っているらしいが、なんとなくぼんやりした味なので、もう少し、もう少し、とかんでみた。こんなことをしているとまた詰め物がとれちゃうな、と思った瞬間、歯に激痛がはしった。なんとなく硬いものが舌に触る。飴は歯を上下にしっかり接着していて口も開かないのだが、どうもやっちゃったらしい。そのままうろたえながら郵便局にいき、おろおろと払込票の記入をする。ろくに味わわないままに口中の飴は消滅し、小さな塊が残った。指の上に出してみると、果たせるかな、3ミリほどの、漫画に出てくる骨のような形の金属である。
なくさないように指でしっかり持ったまま払込の手続きを終えると、係りの人が何のサービスなのだかポケットティッシュをひとつくれた。早速一枚取り出して、金属片を大事に包んでもって帰った。はあああ。郵便局にいったことが不運だったのか幸運だったのかよくわからないまま、ただ落ち込む。


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