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11月の最初の祝日、私は飯田橋の駅前にいた。 初対面の人との待ち合わせである。それらしい年格好の女性がすでに来ていたが、事前に知らされていた服装とは違う。少し所在なげに佇んで見せた後、相手の携帯電話にかけてみると、例の女性が顔を輝かせて駆け寄ってくる。前日の雨で服装が変わってしまったことと、以前私が自分のページに載せていた写真と髪型が違っていたので声をかけなかったことを聞く。何はともあれ「はじめまして」である。 関西在住の彼女と知合ったのは、あるリンクから私のページを見てくれて、掲示板に書き込んでくれるようになったのがきっかけである。たまたま上京する予定があるというので、以前掲示板で話題になった神楽坂のクレープ屋でお昼を一緒にしようという事になったのだ。そうこうしているうちに他の人たちも到着し、参加者が勢揃いした。 といっても、純粋にネット上の知合いは最初の彼女だけで、残りの二人は昔からの知合いなのだが、私の中ではその手の明確な区別がつけにくくなっている。日常生活でネットに繋がない日はほとんどなく、ネットにつながっていない友人たちとの付き合いは明らかに疎になっているので、そういう区別は意味がないのだ。 とはいうものの、私の掲示板を媒体にして、異なった文脈での友人がそれを越えて知合いになっていくというのは、見ていてとても面白いし、存外の喜びでもある。そこはやはりネットならではの恩恵なのだろう。 その日は幸い好天で、初対面特有の緊張と、昔から打ち解けた間柄のような気安さがない交ぜになった独特の雰囲気で、早速お目当てのクレープ屋に向かう。そこじゃ寒いだろう、というフランス人店員の意見を押し切って野外のテーブルを占める。 クレープといっても原宿で売っているようなカラースプレーやチョコレートシロップのかかった甘いものではなく、そば粉を使ったクレープ生地に卵やハム、チーズなどを乗せ、主食としても通用するものである。さらにデザートとして小麦粉を使ったクレープに砂糖やジャムを乗せたものを食べる。そば粉のクレープはフランスのブルターニュ地方の名物で、これもまた名物の林檎酒と共に食す。この店はそれを初めて日本に持ち込んだのだという。 あれやこれやとメニューを選びながら、知ったかぶりでクレープについて講釈を垂れ、ゴールデンウィークに訪ねたブルターニュ地方の街に思いを馳せる秋の午後である。
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