WELLA
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1998年06月03日(水) 家を探そう

われわれが落ち着いた先は、短期滞在用のフラットで、一応一ヶ月を上限に3週間の約束で借りてある。その後はちゃんと住む家を探すために、まず家探しが始まった。
家探しの方法は二通りあって、一つは当たり前に地域の不動産屋をあたること、もう一つは大学の訪問研究員会(Visiting Scholar Society)に登録してあるリストから選ぶことである。われわれが到着したのは年度末で、ちょうど訪問研究員たちが帰国する時期にあたるため、比較的楽に見つかるだろうという見込みである。

有能な秘書ペニーさんがいうには、不動産屋と大学と両方からあたったほうがいい物件がある可能性が高いわ、ということなので、まず街の不動産屋からあたることにした。ペニーさんが一緒に来てくれる。まったく彼女がいなければわれわれは何もできないのであった。
何軒かの不動産屋をあたったが、歩いて探すには苦労が多い。ここは賃貸はしていないといわれたり、賃貸していても6月に入らないと物件は出ないとか、あまり芳しくない。不動産屋巡りは適当に切り上げて、今度は大学のほうに行ってみる。ここは確か林望氏がかつて冷たくあしらわれたところではなかったか。
びくびくしながらペニーさんの後をついて行く。事務所に行くとちょっと年配の女性が机のところにいる。この人は林望氏が行ったときもここにいたのだろうか。ペニーさんが自信たっぷりにわれわれを紹介すると、「ようこそ、ケンブリッジへ」と、手を差しのべられた。ほっ。
さっそく登録用紙に記入して、2、3われわれの希望を伝えると、それをそのまま目の前のコンピュータに入力していく。ほほぉ。コンピュータである。みるみる十数件出力されてきた。ついでに訪問研究員用の無料英語講座などのチラシをもらって事務所を後にした。なんだ、意外と簡単である。
林望氏が行ったのは夕方で、終業近くだったというし、ま、いろいろ事情が違ったのだろう。

研究所に戻って、地図を片手にリストをみる。家賃は月額500£〜1000£で出してもらったが、平均すると700£といったところである。日本円にして15万円ぐらいか。いずれもケンブリッジの中心街から近い。大学でもらってきたほうが商売でないだけ割安感がある。道楽で貸しているオーナーも多いらしく、所有者の欄が業者のものと個人名のものとがある。
ペニーさんはリストを見ている私の横に座り、一緒にリストをチェックしてくれた。「うーん、これは高いわ」「これは遠い」「ああ、ここはいいわねぇ」などと盛り上がっている。彼女も働く婦人だけあって、キッチンの設備には興味があるらしい。「あらぁ、ここは皿洗い機も付いてるのね」「あら、こっちは乾燥機もついてるわ」「んまぁ、これは全部そろってるわ」などといいながら一通り見たあと、家族が来た時のために4人まで泊まれる家がよかろう、ということになった。せっかくなら庭付きがいい。

有能かつ心暖かい秘書ペニーさんは2〜3の物件にあたりをつけると、目の前の電話を取り上げ早速電話をしてくれた。ところどころ聞き取れないのだが用件の伝え方が見事である。われわれの家にはまだ電話が入っていないので、連絡先は研究所になる。彼女は相手に自分のオフィスへの直通電話だけでなく、夜の連絡先として自宅の電話番号を教えている。なんという人柄だろうか。すばらしい。

さて、あとは先方からの連絡を待つだけである。夜のうちに連絡がくるかもしれないので、明日のお昼にまた研究所にくることにして家に帰ることにした。
家に帰るとなんとも殺風景である。もともと住むように作られたわけではないところを無理矢理フラットとして使っているのだ。洗面台と便器がある四畳ほどの部屋にカプセルシャワーが置いてある。バスタブはない。そういえばシャワーのお湯が異常にぬるいのだった。
西洋人は低温に強いらしく、海外に行くと朝っぱらから屋外のプールで泳いでいたりするが、それと同じ理由でシャワーの温度はこんなものらしい。たのむよ、もう。
というわけで、今度借りる家はバスタブがあることが絶対条件である。


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