WELLA DiaryINDEX|past|will
ケンブリッジに到着したわれわれを迎えたのは、受入先のプロフェッサーの大変有能な秘書、ペニーさんである。年の頃50前後。彼女は3時間も到着が遅れたわれわれを、オフィスで仕事をしながら待ちつづけていた。というのもこのあと宿泊場所に案内して、さらに食事を共にすることになっていたからである。仕事とはいえ大幅な残業である。そんなことを意に介さない彼女は、相当な仕事好きであることを窺わせる。 ペニーさんが用意してくれた宿泊場所はホテルではなく、ケンブリッジ大学の中のピータハウスというカレッジのゲストハウスだった。古いカレッジの建物の一角にまるで隠れ家のようである。これだとホテルよりずっと安くあがる。間取りはベッドルームと居間兼食堂、小さなキッチンと洗面所。シャワーだけでバスタブはない。家具はベッドが2つ、傾いたタンスが2つと折りたたみテーブルが一つ、そしてなぜか椅子だけは肘掛け付きが4、肘掛けなしが3と、豪勢に7脚もある。それからタオルやシーツのリネン類が数セット。 キッチンには最低限の食器のセットと調理道具がそろっており、冷蔵庫には彼女が用意してくれた朝食用の食料が少し、それからインスタントコーヒーとティーバックの紅茶。お米の国から来たわれわれのために、タイ米も用意してある。がらんとした部屋の様子に少し戸惑いながら、彼女の親切が身にしみる。ここで数週間を過ごしながらその間に住む家を探すのである。 食事はタイ料理のレストランに連れて行ってもらった。これもアジアからきたわれわれのための彼女の心尽くしである。ケンブリッジに日本料理店はないとのこと。タイ料理の隣はインド料理店、その反対側はアジア系の食材を扱う店である。それもあってここを選んでくれたらしい。 われわれの宿泊場所はまさにケンブリッジの中心部にあたり、ここは歩いて5分くらいのケム川の対岸に位置している。川のほとりは野外でビールを飲んでは談笑する人々でにぎやかである。名物のボート(PUNTS)に乗っているグループもいる。うむ、これがケンブリッジの学生たちか。騒いでいるところは日本の大学生と変わらないが、きっと何倍も勉強するのだろう。 毎日こんな風に騒いでいるのかとペニーさんに聞いたが、今日は週末だし、今週からお天気が急によくなったから出歩いているのだろうという。それまでは寒かったらしい。実は夫は晴れ男である。われわれを迎えるためにケンブリッジも陽気がよくなったらしい。わはは。 日本からの彼女へのお土産は扇子とハンカチのセット。それからうちにあった豆粒ほどの雛人形。 日本人の受け入れに慣れている先だと、やたらと豪華なガラスケース入りの藤娘の人形やらジャパニーズなものを持っているものである。そんな自分たちも使わないような古典的なものを贈ってどうするのだ。扇子はボーダーラインかな。喜んでくれたようで何よりである。 満腹になったところでゲストハウスに戻る。明日は土曜日で休みであるが、ペニーさんが夫の同僚となる人と私の英語学校の世話をしてくれる人を紹介するために食事に行こうという。つくづく仕事熱心な人である。喜んでそのお誘いを受け、彼女を送り出して顔を洗うのもそこそこにベッドに潜り込んだ。
|