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1998年01月01日(木) 1997年12月22日(月) サンタがやってくる

巷はクリスマスです。
毎年サンタクロースがいるかいないかなんてことが深刻な悩みとなって新聞に載る時期でもあります。サンタクロースが存在しないなんてことは、私はもう四半世紀も前から知っているのに、いまだに分っていない人々がいるとは、驚きです。これも親の教育が行き届かないせいです。(違うって)
その点うちの両親は明快です。
母は子供だましのことを真剣にやる人ではありませんでしたので、大体プレゼントを枕もとにそっと置く、などということはせず、買って来たものを「はい、クリスマスプレゼント」といって私に手渡して終わり。
父は私の憶えている限りでは、一度だけイブにクリスマスケーキを買って来たことがありますが、その時に「今日は本当のクリスマスじゃない」といいます。困惑して「じゃあ、今日は何の日なの?」と聞くと、「今日はクリスマスの予行演習の日だ」といい、母も「そうよ、本当のクリスマスは明日よ」などと言います。本当のクリスマスじゃない日にクリスマスケーキを食べるだなんて、釈然としません。
そのくせ家には本物のモミの木の鉢があって、クリスマスの近くになると父がそれを家の中にいれて、みんなで飾り付けをしたものですから、あながちクリスマスを軽視していたとは思えません。

ところで、私の通っていた幼稚園はカトリックで、園長先生は外国人の神父様でした。ローマから派遣された人だそうですが、はて、本当は何人だったんでしょうね。ともかくカトリックの僧らしく、長い僧衣をまとったでっぷりと太った人でした。子供達はみんな園長先生が好きで、先生を囲んでは「えんちょうせんせい、なんで、おなかがおおきいの?」やら「あかちゃんがいるの?」やら答えようのない質問をあびせたものでした。
カトリックですからクリスマスの行事はきちんとあります。本当のクリスマスは既に冬休みに入ってますから、世間より早めに、しかも幼稚園のある時間帯である昼間の行事としてやるわけです。
朝お御堂でお祈りして、イエズス様生誕のお話を聞いて、歌を歌ってその後お教室でじっと待っていると、ガラっとドアがあいてサンタクロースが「メリークリスマス!」と入って来ました。先生も「サンタのおじさんがきましたよぉ!」などと雰囲気を盛り上げるわけですが、どうみても、園長先生です。たしかに西洋人だけあって髪の色といい、瞳の色といい、サンタそっくりなのですが、日頃見慣れたあの体型や声です。
袋に入ったお菓子を配ると出て行きましたが、あれはサンタじゃありません。だってサンタならドアから出入りするはずないもん、というのが幼い私の論拠だったんですけどね。本物のサンタはクリスマスの夜煙突から入って来ると信じていたので、あれは偽物とふんだわけです。

もらったお菓子をもって家に帰って「今日、幼稚園に園長先生のサンタさんが来たよ。」と母に報告しました(本当のサンタさんはクリスマスに煙突からくるんだもんねぇ、という含意)。
あとからわかったことですが、この発言で母は、幼い私がもはやサンタを信じていないことを確信したそうです。だから小細工はやめたとか。
なんてせっかちな…。うううぅ、信じていたのに。
といっても私にはかなり年長の兄がいましたから、バレるのは時間の問題だと思っていたのかも知れません。

さて、その後幼い私リトル・レイコナは、サンタクロースが来ない事をどう受け止めていたのでしょうか。

多分私は、まだサンタクロースはいる、と信じていました。
サンタが来ないのは、家に煙突がないからなんです。いくらなんでも世界中を一晩で回れるはずがないので、サンタが来るのは煙突のある家だけなんでしょう。近所にマントルピースの煙突のある家がありましたが、あそこには来るのかも知れない。でも、あそこに住んでるのはおじさんとおばさんだけだし、あそこには来ても仕方ないだろう、なんて思っていたわけです。

しばらくして、家の旧式の風呂釜が変わって換気用の小さな煙突がついた時、これでサンタがくるかも知れない、と私が喜んでいたことなど両親は知る由もないのでした。


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